配信視聴者は「消費者」ではなく「共同創造者」
プラットフォームの変化とクリエイター・エコノミーの成長により、かつては広告を介して結びついていたクリエイター、視聴者、プラットフォームの関係は、より双方向的なものへと進化しました。
特に、ライブ配信の登場は大きな変化をもたらしました。YouTubeのライブ配信では、視聴者がコメントを投稿すると、配信者がすぐに反応できます。配信を「見る」だけでなく「参加する」ことが可能になったことで、視聴者の存在自体がチャンネルの価値となりました。
もともと視聴者がメディアに参加する形態は、インターネット以前からありました。たとえば、ラジオ番組ではリスナーからのハガキや電話を紹介し、テレビでも視聴者が出演する企画がありました。しかし、インターネット時代になり、この「視聴者参加型」のスタイルがよりダイレクトに、より容易になりました。現在のライブ配信には、従来のラジオ的な要素も含まれていますが、最大の違いは「映像配信とリアルタイムの参加」が可能になった点でしょう。
いまや、視聴者は単なる受け手ではなく、配信の一部を構成する存在であると言えます。視聴者に対するクリエイターのリアクションは、コンテンツの魅力を大きく左右するようになりました。そのため、視聴者もコンテンツ作りに関与する「コ・クリエイター(共同創作者)」としての役割を担うようになっているのです。
ここで、クリエイター・エコノミーの文脈においては、ゲーム実況というコンテンツの躍進を特筆するべきでしょう。個人がマスメディアを介さずにオンラインプラットフォームで収益を得ることが可能になったことに加え、コロナ禍を経た巣ごもり需要でゲーム市場全体が成長したことにより、ゲーム実況の視聴者数は大幅に増加しました。手がけるクリエイターのタレント化が進み、インフルエンサーとしての影響力が増大しています。
ゲーム実況は、単なるプレイ動画の共有にとどまらず、メディアコンテンツとして確立され、クリエイター・エコノミーの重要な要素となっています。特に、Twitch、YouTube Gaming、Facebook Gamingなどのプラットフォーム間競争が激化しています。
プラットフォーム側はクリエイターの収益化支援を強化することで競争力を維持しようとする一方で、視聴者の参加形態の多様化が進んでいます。今後は、ゲーム市場の成長、eスポーツとの融合、VR/AR技術の進展などと共に、クリエイター・エコノミーの影響がよりいっそう大きくなることが予想されます。
このように、ゲーム実況のようなクリエイター・エコノミーにおいて、クリエイターの影響力が増大すると同時に、視聴者は単なる「コンテンツ消費者」から「共同創造者」へと発展しており、今後もその傾向は強まっていくと考えられます。
※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。