生成AIでつくられたリアルなポルノ、とくに児童ポルノの法解釈は難しい
生成AIの活用でより悩ましいのが児童ポルノです。児童を保護するのが児童ポルノ禁止法の趣旨なので、その画像が特定児童のものだと断定できない場合、処罰の対象になるのかという問題が出てきます。児童ポルノを見たり所持したりすることではなく、対象となっている人が加害されていることに問題があるという考え方なわけです。
日本の場合、アニメや漫画などで児童に対して性的な印象を与える描写をしても処罰の対象外になります。生成AIが架空の人物をつくった場合には、いくらリアルでも同じような扱いになると予想されます。無修正の裸の画像・映像だと、刑法175条のわいせつ物頒布等罪に抵触しますが、そうでない場合はまだ立件されていないのでどうなるかわかりません。
しかし、世界に目を向けると、架空の人物であっても児童ポルノはダメだという国も多いです。ヨーロッパはもともと児童に対する性犯罪が頻発していたため規制が厳しく、なかには、たとえ成人女性であっても児童に見える人物でポルノをつくることを禁止している国もあります。もともと組織犯罪を世界的に食い止めようとする流れのなかで、日本も児童ポルノの規制を始めたという経緯があるため、今後は世界情勢に後押しされて、日本の規制も厳しくなる可能性は十分に考えられます。
私たちは生成AIとどう付き合うべきか。自分で生成する分には自由です。それを誰かに見せたり、社会に拡散したり、情報を共有したりするのが、場合によっては法律に触れる可能性があるわけです。発信する前に一歩立ち止まって判断することが、自分自身にとっても、社会にとっても、大事なことだと考えます。
※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。