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2025.06.05

生成AIによって引き起こされるサイバー犯罪に関する法整備

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社会に混乱を招くディープフェイクも、名誉毀損と業務妨害にしか問われない

 生成AIを活用したディープフェイクも課題です。つくること自体はまず問題ないでしょうが、拡散させるところで刑法に関わってきます。

 ディープフェイクの場合、名誉毀損罪はもちろん、業務妨害罪となる可能性もおおいにあります。災害時を含め、ディープフェイクの画像や映像を拡散することで、企業や自治体などの業務が妨げられるおそれがあるからです。爆弾を仕掛けたと嘘の通報をするのと同じで、たとえば火事に見える画像や映像を流すことでも、一定期間、その対応に追われることもあるため、業務妨害として処罰できるはずです。

 ほかにも煽動行為が生じてくるおそれもあります。言葉で煽られるよりも、画像や映像を使ってやられるとリアリティが高まり、騒乱にまで発展する可能性が高まるかもしれません。最近では選挙においてもディープフェイクが問題となりましたが、選挙妨害も起こり得るでしょう。しかし議論はまだ煮詰まっておらず、現状は、極端に言えば業務妨害と名誉毀損に引っかからなければ何をしてもいい状態になっています。

 では、そもそも問題が起きないように予防的に法律をつくっておけばいいのではないかと思うかもしれません。しかし、現状ではなかなかそれも難しいのが実情です。社会的に規制しなければならない事実があって初めて、刑事立法ができるからです。

 表現行為の規制は、やはり慎重にならざるを得ません。やりすぎると今度は、表現の自由が侵されしまうため、他国でもまだシビアに規定していない状況です。ヨーロッパは社会的な連帯性を考える人たちが多いので、規制が厳しくなる可能性が高いと思われますが、日本やアメリカでは表現の自由を侵さないことに軸足が置かれそうです。

英語版はこちら

※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

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