原発・廃炉産業依存からの脱却:福島の持続可能な復興へ
現在、福島第一原発の周辺地区においては、農業の再生が非常に難しい状況にあります。私が行った震災後の浜通り地区でのインタビューを通じて、地域の人々が農業への強い愛着を抱いていることが明らかになりました。にもかかわらず、農業の再生は依然として困難な状況が続いています。
さらに、政府の復興政策は製造業を中心に据えています。しかし、私の研究によると、原発や廃炉産業の高賃金が地元の製造業の発展を阻害しており、その振興は容易ではありません。
東日本大震災から14年が経過しましたが、多くの住民は依然として故郷に戻れず、大きな喪失感を抱えています。震災前の農業とともに歩む暮らしを取り戻すことが難しい現状で、復興の方向性はロボット産業や廃炉作業といった新たな産業へとシフトしています。しかし、こうした変化は住民が望む「震災前の暮らしの再建」と大きく乖離しているのではないでしょうか。
このギャップを埋めるためには、被災者や避難者の声を反映した政策が必要です。単なる経済再生にとどまらず、人々の記憶や思いに寄り添った復興が求められます。そして、それが原発や廃炉産業に頼らない、真に持続可能な浜通りの復興への第一歩になるはずです。
(本オピニオンの分析は、以下の論文の内容を要約したものです。下記のリンクより全文をご覧いただけます。)
Shimada, Go. 2024. “Fukushima Daiichi nuclear power plant impact on regional economies from 1960 to 2010.” Renewable and Sustainable Energy Reviews 203:114801.
doi: https://doi.org/10.1016/j.rser.2024.114801
(日本語のグラフィカル・アブストラクト→https://bit.ly/3YqzUup)
※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。