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100万台のEVを集約すれば、1日数千万円の利益が得られる可能性も

 EVアグリゲーターの取り組みは、現在、世界的に推し進められていて、とくに欧米ではビジネスになりつつあります。日本でも再生可能エネルギーに対し、EVや蓄電池、さまざまな発電設備が活用できるよう、2022年4月にアグリゲーターライセンス制度が導入されました。これは発電事業者以外から1,000kWを超える電気を集約し、各種事業者に供給することが見込める者は、事前に届出を行う必要があるというもの。 言い換えれば、発電事業者でなくてもEVアグリゲータービジネスへの参画は可能なのです。

 EVの充放電の遠隔制御はすでに実社会に取り入れられ始めており、充電に関してはビジネス化されようとしています。しかし放電については、まだ確立までの道のりは遠いと言わざるを得ません。EVオーナーにとって安価での充電はうれしいことであっても、放電となると出かけたいときに使えないおそれも出てくるからです。EVオーナーにとって放電がどれだけメリットがあることなのかを明確に示せれば、状況も変わっていくでしょう。

 EVの充放電はプラグにつないで行います。EVアグリゲーターも同じくプラグを介して電力のやりとりを行うことになるので、ビジネスとして成立させるためには、いつプラグインしているかを知ることが重要になります。それを調べるために、私の研究室では国土交通省から道路交通センサスの情報提供を受け、分析にあたりました。道路交通センサスとは、全国の道路状況やその利用実態を捉える、道路の国勢調査です。1日のうちに走行する時間帯や距離、始動させる回数などのデータが得られます。

 分析から見えてきたのは、例えば休日なら乗用車の約50%が1日中停車をしていて、約30%が1日2トリップ、つまり朝夕の送り迎えや出勤退勤などで1日2回使っていたことでした。また、朝方に自宅から離れ、1回のトリップは1時間以内、平均の走行距離は約9kmというケースが多いことがわかりました。そこから、どの時間帯に何割ぐらいのEVがプラグインするかを検証し、100台の車があれば、朝6時の段階で10台はトリップし、90台はプラグインしているといった確率を算出。どの時間帯にEVがプラグインできるかを、統計的に割り出しました。この情報をもとに、例えば電気代が安いときに充電、つまり購入し、高いときに放電、つまり販売したとしてシミュレーションをしたところ、あくまでも試算ですが、九州エリアで乗用車の30%、つまり約100万台がEVになった場合、休日1日で数千万円ほどの利益が得られることが見えてきました。

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※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

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