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2023.03.31

日本のいまの制度では冤罪はなくならない!?

日本のいまの制度では冤罪はなくならない!?
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1966年に起こった強盗殺人放火事件で、1980年に死刑判決が確定した袴田事件。2020年12月、最高裁は再審請求を棄却した東京高裁の決定を取り消し、事件を東京高裁に差し戻しました。そして、2023年3月、東京高裁が再審開始を決定し、検察は特別抗告を断念。ようやく再審開始決定が確定しました。なぜ、このような重大事件で冤罪が起き、なぜ、再審にこれほど長い時間がかかったのでしょう。

冤罪なのに「自白」がある?

石田 倫識 袴田事件は誤判冤罪事件という見方が強まっています。実は、再審無罪判決が出された事件は、近年だけでも、東住吉事件、松橋事件、湖東記念病院事件等があります。また、現在、最高裁に係属中の日野町事件でも、地裁、高裁で再審開始決定が出されています。

 なぜ無実の人が逮捕され、裁判で有罪とされるようなことが起きるのでしょうか。

 その原因として、捜査機関による自白の誘導、強要、そして、証拠隠しやねつ造などがよく指摘されます。袴田事件を例に見てみましょう。

 1966年に、静岡県にある味噌製造会社の専務一家4人が自宅で殺され、放火されるという事件が起こります。犯人として逮捕されたのは、この味噌製造会社の従業員である袴田巖さんでした。

 警察の取調べに対して袴田さんは否認しますが、逮捕から19日後、連日長時間の取調べに耐え切れず、起訴の前日に「自白」させられます。裁判では再び一貫して無実を訴えましたが、1980年に最高裁で死刑が確定しました。

 2014年3月、二度目の再審請求で再審開始決定が出され、袴田さんは約48年ぶりに釈放されます。しかし、検察の不服申立てを受け、さらに審理は続けられることになります。2023年3月20日、検察が最高裁への特別抗告を断念したことで、ようやく再審開始決定が確定しました。袴田さんの逮捕から実に57年の月日が経っています。

 これから再審公判が始まります。ここで改めて有罪・無罪を判断するのですが、日本では、ほぼ確実に再審公判で無罪判決が出されます。逆に言えば、再審公判で100%無罪になる事件しか再審開始にはならない、ということです。それぐらい再審開始のハードルは高いのです。

 袴田さんの再審無罪はほぼ確実です。つまり、袴田さんは犯人ではなかったということになります。しかし、無実であるはずの袴田さんも「自白」させられています。

 実は、袴田事件に限らず、これまでの冤罪事件を調べていくと、多くの事件で、無実の人が「自白」させられています。無実であっても否認を貫き通せる人の方が圧倒的に少ないのです。

 日本には4件の死刑再審無罪事件(免田事件、財田川事件、松山事件、島田事件)がありますが(袴田事件は5件目になります)、いずれの事件にも「自白」がありました。先ほど挙げた近年の再審無罪事件(東住吉事件、松橋事件、湖東記念病院事件)でも、すべての事件に「自白」がありました。

 2002年の氷見事件(住居侵入強姦および強姦未遂事件)は、後に真犯人が現われて再審無罪となったケースですが、元被告人は、「自白」だけでなく、犯行現場(被害者の部屋)の見取り図まで書いていました。

 一体どうやって無実の人が、行ったこともない犯行現場の見取り図を書けたのでしょうか?なぜやってもいない罪を認めてしまうのでしょうか?その原因の一端が、捜査機関の取調べのやり方にあることは明らかです。

英語版はこちら

※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

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