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ポストフェミニズムと言い切って良いの?

大澤 舞 大澤 舞 明治大学 理工学部 専任講師

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最近、フェミニズムについて、怖いというイメージをもつ若い女性が増えています。そこには、フェミニズムについての正しい知識が不足していることがあります。ポストフェミニズムと言われるいまだからこそ、フェミニズムについてあらためて知る必要があるのではないでしょうか。

長い歴史があるフェミニズム

大澤 舞 多くの人が、フェミニズムとか、ジェンダーという言葉を聞いたことがあると思います。でも、それを正しく理解している人は少ないのではないでしょうか。

 まず、フェミニズムの流れ、歴史を振り返ってみましょう。フェミニズムには、大きく分けて3つの波があります。

 第一波フェミニズムは、主に法制度上の男女平等を求める活動で、古くは18世紀末のフランスに遡りますが、女性の参政権や財産権を求める活動は19世紀中頃からヨーロッパなどで盛んになります。

 第二波フェミニズムは第二次世界大戦後の1950~60年代にかけて、ヨーロッパやアメリカでの公民権運動などとともに始まった女性解放運動です。雇用の男女機会均等をはじめ、性差別の是正や中絶の合法化を求める活動として盛り上がります。

 つまり、フェミニズムとは、そもそも、社会に男女不平等や女性を抑圧する構造があるからこそ起きたムーヴメントです。こうした活動を通して、女性は、参政権や財産権、また、大学などの高等教育を受ける機会を獲得していったのです。

 しかし、1980年代後半から1990年代にかけて、第三波フェミニズムが起こります。これは、それまでの「集団」的な社会改革から「個人」に目を向け、第二波を引き継ぎつつも、多様性やインターセクショナリティの重要性を強調しました。

 そして近年、しばしば目にするのが「ポストフェミニズム」という言葉です。1980年代以降の新自由主義(ネオリベラリズム)との連続性があり、競争社会のなかで女性個人の立身出世に重きが置かれています。日本では1986年に男女雇用機会均等法が施行され、一応の権利や平等は達成されたという意識が1980年代から90年代にかけて広がり始め、現在にまで至っています。

 いま、日本では、もちろん、女性に参政権はありますし、財産権もあります。多くの女性が大学に進学もしています。こうした状況はフェミニズムの活動を通して得られた歴史があることを、まず知っておいてほしいと思います。

 その上で、かつてのフェミニズムの活動が一応の成果を上げた大きな要因のひとつに、女性たちの連帯があったことも知っておくべきでしょう。彼女たちはシスターフッドを形成し、連帯することで、男性社会に女性の権利や平等を打ち立ててきたと言えます。

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