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現代の社会的課題を解決する糸口は、中庸の欲張り!?

本所 靖博 本所 靖博 明治大学 農学部 准教授

田舎生活を知るきっかけの「トカイナカヴィレッジ構想」

 中庸というと、個性がなく、みんな同じになることのように思われがちですが、むしろ、右か左に偏ることの方が自分を縛り、窮屈になるのではないでしょうか。

 右に良さそうなものがあれば行って見たり、左に面白そうなものがあれば行って体験したりする方が自分の幅が広がります。要は、自分の立ち位置をニュートラルにしておくことで、右にも左にも関係を持つことができるわけです。それを、私は中庸と考えています。

 近年、多様性を受容するダイバーシティ&インクルージョンや、共生社会が求められたり、二拠点居住のデュアルライフの実現が期待されています。そのためには、まず、他者との接点を持つことで、他者を理解したり、思いをめぐらせることができるようになることが必要です。

 つまり、分断を生むブラックボックスを壊すことです。そのためにも、中庸であることは重要だと考えています。

 そうした中庸の感覚を持つ人たちの、ある種の交流の場として、本学生田キャンパスと同じ川崎市に立地する「松本傳左衛門農園」において、「トカイナカヴィレッジ構想」が進められており、その活動に恩師とともに私も関わっています。

 このプロジェクトは、会員になって農園内の畑で自分なりに農作業をしたり、一般の人も収穫体験などに参加できるなど、日頃、都会に暮らす人に田舎暮らしの接点を持ってもらう活動です。

 ここを訪れた人は、新宿の高層ビルが望める立地に、昔ながらの畑や里山がある環境に驚くとともに、その居心地の良さを実感します。

 そして、会員同士で助け合ったり、農家の人から指導を受けて農作業に汗を流していると、心と体のモヤモヤが安らいだり、気持ちが落ち着くという人が多くいます。

 また、心や体に障害を持つ人も、ここでの体験で精神が安定したりします。

 また、採れたての野菜はスーパーで売っているものよりも甘くて美味しいこと。美味しい作物ほど虫がつくこと。

 でも、そこまで育てるのはとても大変なこと。そうやって育てた作物が収穫直前に大雨で流されてしまうこともあることなど、実に様々な体験を通して、いままで知らなかったたくさんのことを知っていきます。

 そして、なにより、農家の人たちのおおらかさに驚かされます。手間をかけて大切に育ててきた作物が、高温続きや豪雨、雹などでダメになることがあっても、彼らはイライラしたり、文句を言うのではなく、それを自然に受け入れて、では、どうしたら良いかと最適解を探して工夫するのです。

 嫌なことがあるとすぐに怒るような人たちを身近に見る私たちにとって、農家の人たちのおおらかさ、人としての器の大きさには、驚きを超えて尊敬の念を抱きます。

 それは、自分の困りごととはなんだったのか、それをあらためて見つめ直すきっかけにもなります。

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