Meiji.net

2022.02.16

えっ!!それって著作権侵害になるの!?

  • Share

生徒の演奏は音楽教室による演奏?

 ところが、2020年2月の第一審判決(東京地判令和2年2月28日平成29(ワ)20502)では、①先生の演奏だけではなく、②生徒の演奏についても、音楽教室の運営者が演奏を行っていると評価し、演奏権の侵害を肯定しました。

 こうした考え方の背景には、実は、カラオケに関して先例となる裁判例があります。そのうち特に重要なものとしては、1988年のクラブキャッツアイ事件最高裁判決が挙げられます(最判昭和63年3月15日民集42巻3号199頁)。

 この事件では、カラオケスナックにおける客の歌唱について、お店の管理下で行われている行為であり、また、客の歌唱からお店が利益を得ていること等を理由として、当該事案では、客の歌唱は、カラオケスナック(の経営者)が規範的には歌っていることになる、と評価されるとして、カラオケスナックの経営者の演奏権の侵害が認められました。

 この判決のロジックには相当の批判もありましたが、以後、下級審で、様々な事案に拡張して適用されるようになります。

 例えば、カラオケボックスで客が歌うのも、歌っている主体は店であり、同室の客に聞かせていると判断されます。極端な例を挙げれば、ひとりカラオケでも、店が歌ってひとりの客(実際に歌っている人本人)に聞かせている、という考え方がされるようになったのです。

 この裁判例は積み重ねられ、「カラオケ法理」と呼ばれるようになっています。

 そして、第一審の判決は、この「カラオケ法理」を、音楽教室での生徒の演奏にも適用したものでありました。生徒の演奏も音楽教室の管理下にあるので、その演奏の主体は音楽教室となるわけです。

 そして、個人授業等の場合、音楽教室が、その演奏(実際には生徒による演奏)を、音楽教室からみて「公衆」である生徒(実際には演奏している本人)に聞かせていることになる点で、これは公に行われた演奏であり、演奏権の侵害となると判断されたのです。

 皆さんは、この判決についてどう思われるでしょうか。実は、著作権法の研究者の中でも、特に、生徒による演奏まで音楽教室の演奏と評価した点については、疑問をもつ人がいました。

 音楽教室側は第一審に納得できず、控訴しました。

英語版はこちら

※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

  • Share

あわせて読みたい