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音楽が魅力的で面白いのは、音楽は複数形だから

宮川 渉 宮川 渉 明治大学 情報コミュニケーション学部 特任准教授

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現代は、コンパクトなプレーヤーの発達をはじめ、ICTやAIなどの技術の進展もあり、音楽が常に身近にある生活になっています。私たちにとって、音楽は欠かせない存在と言っても良いかもしれません。では、音楽とはなんなのでしょうか。あらためて考えると、答えは意外と難しいのです。

音楽は複数形で呼ぶべきもの

宮川 渉 音楽とはなにか、と考えると、その答えは人それぞれかもしれません。音楽を定義づけることは、実は、非常に難しいのです。

 例えば、音楽とは、まず「音」が発せられ、文字通り、それを「楽しむ」ことかもしれません。

 しかし、1952年にアメリカの音楽家ジョン・ケージが発表した「4分33秒」は、ピアニストがピアノの前に座り、4分33秒の演奏時間の間、1音も出さないという作品です。つまり、音を出さない「音楽」ということになります。

 もちろん、それが音楽なのか、という議論はありますが、実は、その4分33秒の間、聴衆は、その場で偶然に起こる音に耳をそばだてることになるのです。

 例えば、椅子が動く音、衣擦れの音、人が呼吸する音…。ジョン・ケージは、奏でられたものだけでなく、空間のすべての音が音楽作品になりうることを示しているわけです。

 その意味では、音楽とは、やはり、音を介した表現とか、コミュニケーションということになるのかもしれません。

 実は、同じような試みは他でも行われています。例えば、フランスでは、1940年代から、ミュージック・コンクレートと言われる実験的音楽が作られていました。

 これは、まさに日常の音、人の話し声や動物の鳴き声、自然界の音などを録音し、機械的な処理をして、音楽として構成しようとするものです。

 この技術が、その後、ビートルズの音声編集技術を積極的に用いた作品や、今日のヒップホップなどにおけるサンプリングに繋がっています。

 その意味では、実験的な側面が強く一般的に聴かれることは少ない現代音楽の試みが、ポピュラー音楽などに応用され広まっていくこともあるということであり、それは非常に興味深いことです。

 また、日本の音楽家の武満徹も、この空間には常に音楽があることを「音の河」という概念で語っています。日常には常に音が溢れていて、その音の河の中から聴くべき音をつかみ出してくることが作曲することだと言うのです。

 同じ日常の音に着目しても、それを機械によって再構築することで音楽化しようとする西欧の発想に対して、そこにある音の河の中から音をつかみ出すこと自体を作曲とする武満の発想は、非常に日本的と感じさせられます。

 このように、音楽を、音を介するコミュニケーションと解釈しても、それに対する試みやアプローチは様々にあります。

 要は、ひとくちに音楽と言っても、その定義は多様で、音楽とは、複数形で呼ぶべきものではないかとも思っています。

 一方で、普遍的な音楽の構築を目指してきたのが、クラシックと一般に言われる西洋音楽です。

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