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地球の姿とその進化を知ると、人類の進むべき方向がよりよく見えてくる

新名 良介 新名 良介 明治大学 理工学部 准教授

地球全体の視点から考える

 一方で、地球は生命を繁栄させるために、こうした構造になっているわけではありません。逆に、地球の歴史上、生物の大量絶滅を引き起こすほどの破局的な気候変動が何度も起こっています。その原因はいくつかありますが、重要な要素のひとつが地球内部の変動なのです。

 例えば、アメリカ中西部のイエローストーンは、地下にマグマが溜まっている場所で、過去に超巨大噴火を起こしており、今後も起こす可能性のあるところです。もし、イエローストーンで大噴火が起これば、噴出物が広がって日光を遮り、世界全体の平均気温は最大で10℃程度も下がるという試算があります。地表にそれほどの影響を与えるイエローストーンでも、そこに溜まっているマグマは、体積にして地球全体の僅か約0.0001%にも過ぎないのです。

 大雑把な計算ですが、地球内部がいかに巨大なシステムで、地表はそれに振り回される儚く脆弱な領域であることがわかります。このようなスケールの非対称性のため、この領域に生きる生物の大量絶滅が地球そのものによって何度となく起きているのです。

 仮に、人が地球内部の大変動を事前にキャッチすることができたとしても、それを防ぐ手立ては、今のところありません。おそらく、人類がそのような技術をもつことができるのは、数百年後か、数千年後か、遥か未来のことになるでしょう。

 その一方で、地球上の生物は環境の大変動を何度となく経験しましたが、そのたびに環境に適用した種が生き残り、多種多様に進化することで、再び繁栄を勝ち取ってきました。いま、その繰り返しの果てにいるのが人間です。ところが近年、人間はその活発な経済活動によって数多くの生物を絶滅に追いやっています。

 現在の人類社会が生物多様性から重大な恩恵を受けていることは言うまでもありません。その面からだけでも、生物多様性を犠牲にする行為は、自らの首をしめるようなものです。その上でさらに、地球と生命の40億年を超える歴史から考えてみると、やはりそれはなんとも愚かな行為のように思えます。人類が地球全体の変動を支配できない以上、今のところ生物の多様性だけが、地球の大変動に対して生物が生き残り、また繁栄するための唯一の手立てであるからです。

 ここで誤解のないように強調しておきたいのですが、地球全体から見れば、確かに人の活動によって生じている温室効果ガスや気候変動問題などは些細なことです。しかし、表層環境と生物多様性にとって、それらの問題が致命的な大打撃となりえることは確実です。人類の活動の結果、地球と生命の40億年を超える絶妙な関係が途絶えてしまうことすらありえる一大事といえます。

 ダイナミックな地球の変動と、それに対して、たくましく適応を続けてきた生命の関係に思いをはせると、この自然の仕組みやあり方そのものに対して、より深い畏敬の念が湧いてきます。ややもすると経済面での利益のみを追求しがちな現代社会ですが、地球全体のダイナミクスを知りつつある人類だからこそ、いま、そうした大きな視点をもつことも重要なのではないかと思います。

※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

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