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地球の姿とその進化を知ると、人類の進むべき方向がよりよく見えてくる

新名 良介 新名 良介 明治大学 理工学部 准教授

地球の生命誕生の解明に繋がる新発見

 現代では、地球の内部を観測する方法として、地震波に加えて、電磁気や人工衛星による探査、素粒子観測なども用いられています。また、地球内部に相当するような高圧力、高温を再現し、そこで様々な実験を行う研究も行われています。私たちの研究室も、そういった実験を行っています。

 この実験では、数100万気圧を発生させられるような硬い物質が必要になります。そこで、天然のダイヤモンドを用いたダイヤモンド・アンビルセルという装置が開発されました。そもそも、ダイヤモンドは地表から125~200 kmという、人がとても行けない深さのところの高圧力、高温によって炭素原子が固められたものです。それがマグマなどによって地表近くまで押し上げられることで、私たちはダイヤモンドを手に入れることができるのです。そのダイヤモンドによって、地球内部を推定する実験を行うことができるというのも、不思議な巡り合わせです。

 このダイヤモンドで様々な鉱物や金属を挟んで押し潰すように圧力をかけ、さらに、レーザーや電熱線で高温にします。すると、その鉱物や金属の特性が変化します。例えば、そこで地震波の伝わる速さを測定すると、深さ100 kmに相当する高圧力、高温下で秒速4 kmだったものが、深さ1000 km相当の状態になると、秒速6 kmに変わったりします。そうした様々な鉱物や金属の実験測定値と、実際の地球内部の観測値を照らし合わせることで、地球内部の構造が推定できるわけです。

 最近、私たちのグループは、この装置で鉄を溶かす実験を行いました。地球中心にある内核は固体で、その直上にある外核は溶けた鉄ですから、内核と外核が接しているところは、まさに鉄の融点になっているはずです。つまり、鉄の融点を正確に知ることができれば、温度計を使わなくても、深さ5100 kmの温度を知ることができるのです。従来は、そこは5800 ℃くらいと見積もられていました。しかし、それは200万気圧くらいの実験で得られたものだったのです。

 私たちは、安定性に優れた加熱方法により、深さ5100 kmの実際の圧力に近い、290万気圧で実験することに成功しました。その結果、融点は4850 ℃と、従来よりも1000 ℃ほど低くなることがわかったのです。

 外核と内核が接するところの、より正確な温度が推定できたことは、地球進化の新たな理解に繋がっていきます。例えば、地球の核は原始段階ではすべて液体でした。それがだんだん冷えていったことで、中心部から固まっていったと考えられています。つまり、内核がだんだん成長してきたということです。

 核に内核という芯ができたことは、生命にとって非常に大きな出来事でした。というのも、芯ができたことで、不規則だった溶けた鉄の動きに縦回転軸の流れが生じるようになり、地球には強い地磁気が生じたのです。

 なぜ、強い地磁気ができたことが大きな出来事だったかと言うと、強い地磁気ができたことによって、地球は太陽風の直撃を避けられるようになったのです。太陽風とは、太陽から飛んでくる、水素やヘリウムなどの荷電粒子ですが、生命に有害であるうえに、大気を少しずつはぎ取っていくことが知られています。

 もし、地球がこうした太陽風が降り注ぎ続ける惑星であったら、生命が存続していくことはより難しかったかもしれません。あるいは、海水は宇宙線から生物を守ってくれますので、未だに生物は海の中に留まっていたかもしれません。その意味で、地球上に生命が誕生し、繁栄していった大きな要因のひとつは、内核ができたという地球構造の進化にあったと言えるわけです。

 では、その内核が、いつ地球にできたのでしょうか。それは30億年前とか、あるいは5億年前という説もあり、未だに議論が続いています。もし5億年前だとすると、それはちょうど爆発的に生物が進化した、いわゆるカンブリア大爆発という生命進化イベントの時期と重なります。また、生物が海から陸上に進出したのが4億年前ごろと言われています。例えばこれらの出来事と内核の誕生には関係があるのでしょうか?

 これからの研究で核の冷却速度が正確にわかれば、私たちが決定した境界温度から内核の誕生した時期が計算できますので、その議論にけりをつけられるかもしれません。それだけでなく、外核が完全に冷え固まり、地球が地磁気を持たない惑星に変わる時期もわかるはずです。その時期を過ぎると、地球は次第に生命にとって過酷な世界へと変貌していくでしょう。

 このように、地球内部の様子がより詳細にがわかれば、その進化の解明にも近づいていけます。すると、それは、地球上の生命の誕生や存続に関する議論にもつながるのです。

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