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地域にあるものをつないで、経済循環を構築する

ベトナム・カントー大学でのセミナー(撮影日時:2020年1月8日)
      【ベトナム・カントー大学でのセミナー】
         (撮影日時:2020年1月8日)

 自然や気候が異なれば、その地域の資源も異なります。

 例えば、私は、ベトナムでメコンデルタ農村の問題解決にもたずさわっています。メコンデルタというと、広大な水田が拡がるイメージがあるかと思いますが、開拓されたのは比較的新しく、ここを植民地としたフランスによって19世紀に水路網が整備されてからのことです。

 ところが、21世紀に入ると、その水路をまたぐように道路や橋が整備され、水運が陸運に取って代わられるようになります。すると、使われなくなった水路は放置され、水草が繁茂したり、生活排水が流れていかず、水路に面する水郷農村の衛生環境は悪化しました。

 メコンデルタ農村は、ゼロ海抜地帯です。日本の中山間地域で行ったように小水力発電として水を活用することはできません。そこで、私たちはカントー大学と共同研究を行い、家庭の生ごみや水草からバイオガスを作り、家庭用コンロで使うエネルギーとしたり、それらを堆肥化して、オーガニックの農業に活かす取り組みにチャレンジしました。

 「水路の環境を改善しよう」と呼びかけるだけでは、住民たちは行動を起こさず、変化も起きません。

 しかし、水路の環境を悪化させている問題の原因をその地域の「資源」と捉え、それを住民の生活に経済的にも還元するデザインを考えます。すると、環境改善と経済活動が繋がり、住民の関心や意識も変わってくるのです。これを続けていけばやがて村の景観が変わります。豊かな水郷集落が再生することも夢ではないでしょう。

 日本では、宮崎県五ヶ瀬町の地域づくりに、10年間たずさわっています。ここはチャを中心とする農業や林業が主力産業ですが、やはり人口の流出が続き、ピーク時の1950年代と比べると半分以下になっています。

 でも、決して悲観していません。五ヶ瀬町の住民の皆さんは生き生きとしています。自分たちで野菜や手づくり品の直売所を立ち上げ、高齢者の居場所づくりを行う福祉NPOが立ち上がりました。こういった個々のまちづくり活動を、未来志向で牽引する「五ヶ瀬自然エネルギー研究所」という住民の学習組織もあります。

 私たちは、住民のそうした活動に勇気をもらい、様々な実験的な活動を一緒に行なうことで、その社会的インパクトを実感し、研究に応用していきます。住民の創意ある実践の一つひとつが、日本の農村の未来を照らす希望の灯です。

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