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運動は身体だけでなく頭の健康寿命ものばす

明治大学 農学部 准教授 加納 明彦

運動は生活習慣病や脳の衰えも予防する

 すぐにできる筋トレのひとつに、スクワットがあります。自分の体重を負荷として、膝を曲げ伸ばしする運動です。太腿の筋肉が鍛えられるので、転倒やつまずき防止にも役立ちます。

 しかし、スクワットをするのは辛いという場合は、椅子などに座り、立ち上がる運動を繰り返すだけでも良いと思います。また、椅子に座った状態で、かかとを床につけ、つま先を上げ下げする運動があります。

 これは、つま先を上げる前脛骨筋を鍛えることができ、やはり、転倒やつまずき防止に役立ちます。

 また、楽しくできる運動として筋トレと合わせたエアロビクスダンスなども有効ですが、跳んだりはねたりという運動で、筋肉だけでなく骨に刺激を与え、それによって骨密度が高まるというエビデンスもあります。

 加齢によって骨がもろくなっていく骨粗鬆症が問題になっていますが、その進行を遅らせたり、ある程度回復させることも期待できるのです。

 余分な体脂肪を減らすという観点からも、筋トレをウォーキングなどの有酸素運動と並行して行うことは有効です。

 例えば、内臓脂肪を減らすために有酸素運動が用いられますが、並行して筋トレを行うことで、より効果的に脂肪を減らすことができます。筋トレによって筋肉量が増え、基礎代謝量を上げることができるからです。まさに、脂肪が付きにくい体質になるのです。

 もし、ウォーキングと筋トレを並行して行うのは大変だという場合は、ウォーキング中に大股歩きをして、筋出力を大きくするのもよいと思います。その時に、踏み出す足のつま先を上げる歩き方をするような工夫もあります。

 これにより通常のウォーキングよりも負荷が上がり、筋肉や骨に刺激を与えるとともに、つま先を上げることで前脛骨筋を鍛えることができるわけです。

 しかし、この歩き方はすぐに疲れてしまいます。大股歩きと普通の歩き方を一定時間ごとに繰り返すインターバル・ウォーキングがお勧めです。

 近年では、運動は生活習慣病の予防に欠かせない手段となっています。

 例えば、メタボリックシンドロームとして問題になる内臓脂肪ですが、実は、脂肪細胞はアディポサイトカインという生理活性物質を分泌しています。

 そのなかにはアディポネクチンという、いわゆる善玉の生理活性物質があります。これは、脂肪の燃焼や糖の取り込みを促進したり、血管を修復して動脈硬化を防ぐなどの作用があります。

 このアディポネクチンは、内臓脂肪が減ると分泌量が増加するという特徴があります。

 つまり、有酸素運動や、それをさらに効果的にする筋トレなどの無酸素運動を続けることによって内臓脂肪は減り、それは善玉生理活性物質の分泌を促し、脳血管疾患や心疾患などの生活習慣病の予防に繋がるのです。

 さらに、近年では、運動によって、脳も活性化することがわかってきています。

 例えば、筋肉からはマイオカインという、やはり生理活性物質が分泌されています。このマイオカインは、がんの発生率の低下や免疫機能の亢進をはじめ、アルツハイマー型認知症のリスク軽減に効果があることがわかりつつあり、注目されているのです。

 最近の研究では、毎日継続して運動することによってマイオカインの分泌が良くなるという報告もみられます。

 また、人の動作は、脳と密接な関係があります。

 例えば、ウォーキングのとき、足だけでなく腕も振ると、脳は足と腕に指令を出すことによって、より活性化するのです。

 これが衰えてくると、例えば、高齢者に立ち幅跳びをやってもらうと、腕を振らずに足だけで跳ぶ人が増えてきます。その人に、その場で腕を振ってと言うと、それはできるのです。つまり、足と腕の連動が上手くできなくなっているのです。

 こうした脳の衰えを抑えるためにも、身体の各部を使ったリズミカルな運動は効果的だと考えられます。

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