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2019.12.11

医師の労働時間の改善が、より豊かな医療の実現に繋がる!?

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私たち自身もチーム医療の一員になる

早川 佐知子 日本の近代医療制度は、明治時代に、軍陣医療として整えられていきました。そのため、現在に至るまで、患者の精神的なケアや退院後の日常生活などは軽視されがちです。そして、医師が医療スタッフのヒエラルキーのトップに立ち、常に医師の判断の下にスタッフが動くことで、統率の取れた治療を行うような仕組みでもありました。

 しかし、現代の一般社会では患者は多く、しかも個別性が求められ、複雑化しています。何より、私たちは兵士ではなく、市民です。もう、軍陣医療の仕組みで対応するのは限界なのです。

 そこで、組織をフラット化し、各スタッフが平等で患者に対応する、タスク・シフトをはじめとしたチーム医療を導入することが必要であると思います。

 このとき重要なのは、チーム医療の中心は患者である、ということです。

 このことは、患者になることがある私たち自身も認識する必要があります。

 私たち自身も、医師の言うことに意見を言えなかったり、スタッフに希望を伝えることを遠慮したりしていないでしょうか。

 まるで、自分が一兵隊で、軍医である医師を絶対視するような上下関係を引きずっているようなところがあるように思います。

 もちろん、医療スタッフに対して理不尽な要求をするモンスター・ペイシェントは論外ですが、スタッフに希望や要求を伝えることは、自分の身体を治癒し、回復させる意味でも、とても重要なことです。

 すると、信頼が置けるのは、自分の話をていねいに聞いて対応してくれるスタッフであり、スタッフ間のヒエラルキーなどではないことが実感できると思います。

 私たちのそうした認識が、日本にチーム医療制度を促進させるきっかけになるかもしれません。

 一方で、プライマリ・ケアのような仕組みに対応することは、今日からでも私たちができることです。いわば、私たち自身もチーム医療の一員になることで、より豊かな医療が受けられるようになっていくのです。

>>英語版はこちら(English)

※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

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