明治大学の教授陣が社会のあらゆるテーマと向き合う、大学独自の情報発信サイト

男か女かハッキリしたがる/させたがる不思議

佐々木 掌子 佐々木 掌子 明治大学 文学部 准教授

性的マイノリティがいるから性は多様なのではない

 確かに、周囲の子たちも悪気があって揶揄しているのではないかもしれません。しかし、そうであればなおさら、その子たちにちゃんと問いかけてあげることの方が大切でしょう。

 社会を変えていくために教育が果たす役割は大きいと思います。すでに、様々に工夫した授業を実践している現場の先生たちもいます。教育の成果は一朝一夕に現れるものではないかもしれませんが、多様性と向き合う教育の積み重ねは、とても重要です。

 学校教育にかかわらず、次世代を担う子どもたちをしっかり教育していくためには、社会人である私たちが、自分自身を見つめ直していくことも必要だと思います。

 例えば、職場で、自分では場を盛り上げるつもりで言っていたことが性差別発言だった、という経験があなたにもあるかもしれません。指摘されないと気が付かないですし、指摘されても、つい言い訳をしたくなるということもありますね。加害者だと指摘されるのは辛いですから。でも、こういうテーマを研究している私が、完璧な言動をできているかというと、その自信はありません。そこで開きなおらず、自分の言動をふり返ることが必要なのだと思っています。

 自分の偏見に気がつくことは辛いことばかりでもありません。自己の偏りに直面化することで、自己発見や自己変化の面白さもまたあります。他者を傷つけないために学ぶという動機も大切ですが、新たな視点を得るために学ぶという動機も大切にできるとよいなと思います。

 LGBTと聞くと、どこか遠いことのように感じてしまう人もいるかもしれませんが、よくよく考えはじめると、これまで何も疑いを持たずに男だの女だのと分けていたこと自体が不思議なことだと理解されるようになります。

 自分が男性であることに疑いを持ったことのない方は、是非ふり返ってみてください。憧れる男性の上司や先輩はいませんか。何が自分の中の男らしさなのか不思議だなと思ったことはありませんか。「少しのズレもなく男」という状態は、かなりフィクションめいた状態です。

 自分自身の性のあり方を掘り下げていくと、自分の中の多様性に気が付けて、自分の内面の豊かさを実感することができますし、周りの人の多様性もまた、共感的に受け止めることができるようになるのではないでしょうか。

 性的マイノリティがいるから多様な性があるということではなく、性的にマジョリティだと自覚する人たちが、そもそも皆ひとりひとり異なる性のあり方を持っているのです。

社会・ライフの関連記事

パンデミックによって質屋の機能が見直された!?

2022.11.30

パンデミックによって質屋の機能が見直された!?

  • 明治大学 商学部 専任講師
  • 井上 達樹
食べることで太らないようにする方法が見つかりそう

2022.11.9

食べることで太らないようにする方法が見つかりそう

  • 明治大学 農学部 専任講師
  • 金子 賢太朗
コロナ・パンデミックの知見は社会にとって貴重な財産になる

2022.11.2

コロナ・パンデミックの知見は社会にとって貴重な財産になる

  • 明治大学 政治経済学部 准教授
  • 盛本 圭一
ポストフェミニズムと言い切って良いの?

2022.10.19

ポストフェミニズムと言い切って良いの?

  • 明治大学 理工学部 専任講師
  • 大澤 舞
ことばによるバイアスに気がつく方法とは

2022.9.28

ことばによるバイアスに気がつく方法とは

  • 明治大学 法学部 教授
  • 堀田 秀吾

新着記事

2022.12.07

何のために科学を学ぶのか

2022.12.01

自分で考え、自分で動き、仕事の面白さを知ろう

2022.11.30

パンデミックによって質屋の機能が見直された!?

2022.11.29

行き詰ったら、「知の総合化」で解決しよう

2022.11.25

中華世界の拡大は、実は、理に適っていた!?

人気記事ランキング

1

2020.04.01

歴史を紐解くと見えてくる、台湾の親日の複雑な思い

2

2020.11.04

私たちの身近にある熱エネルギーには多様な可能性がある

3

2019.11.08

#1 日本のアニメはいつから世界で人気になったの?

4

2017.10.18

ゲーテッド・コミュニティの実態に迫り、その“可能性”を探る

5

2022.11.30

パンデミックによって質屋の機能が見直された!?

連載記事