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2019.01.23

日本のスマホ料金が高いのはユーザーが寛容だから?

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スマホの販売方法は独占禁止法に違反するおそれがある

 ある意味、料金の高さ以上にユーザーの不評を買っているのが、スマホの契約条件の複雑さではないでしょうか。

 MNOはユーザーのためを考えた仕組みだと言いますが、2018年6月に公正取引委員会が報告書を公表しており、「独占禁止法」や「景品表示法」などに抵触するおそれが多々指摘されています。

 例えば、「通信と端末のセット販売」です。端末の支払いを月割りにして、その分を月々の携帯電話料金に上乗せするのではなく、逆に携帯電話料金から割引くという販売方法です。

 一見すると、高額の端末を買いやすくしているように思えます。しかし、同報告書では、「端末をその提供に要する費用を著しく下回る価格で販売する」場合は、独占禁止法に違反するおそれがあると指摘しています(いわゆる不当廉売)。

 また、「本来の価格として表示された価格で端末が販売された実績がないなど、根拠のない価格からの大幅な値引き額や値引き率を強調することで、他の事業者に係るものよりも著しく有利であると消費者を誤認させ不当に誘引する」場合には、景品表示法上問題となるおそれがあるとしています。

 例えば、「実質0円」などという表示を目にしたことがある人も多いと思います。つまり、もともとの端末の価格はいくらで、携帯電話料金はいくらなのか、実質的な価格は曖昧で、ただ、とても「お得」であるかのように消費者に思わせているのではないか、ということです。

 いわゆる「2年縛り」は、2年間の長期契約を結ぶことで、その間の月々の携帯電話料金を安くするという販売方法です。

 しかし、契約期間中に解約すると、高額(1万円程度)の解約金を取られます。しかも、この契約は2年経過後も自動更新されます。解約金を取られずに解約できるのは、契約から25ヵ月目と26ヵ月目だけでした。

 これが批判され、いまは、24ヵ月目にも解約できるなどの改善がなされていますが、ユーザーにとって解約しづらい点はそれほど変わっていないでしょう。

 このような販売方法は、ユーザーを囲い込み、他の事業者が食い込んでくることを排除することになり、これも独占禁止法上問題になります。

 いわゆる「4年縛り」は、端末を4年間(48回分)の割賦払いとし、一定期間経過後に、旧端末を下取りに出すこと、新端末についても同じプログラムに加入すること等を条件に、最大2年間分(24回分)の端末の残債を免除する販売方法です。

 MNOは、ユーザーが高額な新機種を入手しやすくするためのサービスと言っていますが、24回分の残債を考えると、ユーザーは定期的に新機種に乗り換えていくこととなり、4年どころか、永久縛りになりかねません。そうであれば、他の事業者を排除することにもなり、やはり独占禁止法上問題となります。

 また、一見、高額な端末を半額で購入できるかのような印象を与えているおそれもあり、その表示や説明の仕方によっては、景品表示法上の問題も出てきます。

 また、「SIMロック」も以前から問題になっています。同報告書では、「SIMロックが消費者にとって通信会社を乗り換える際の妨げとなり、他の事業者の事業活動を困難にさせる場合には、独占禁止法上問題となるおそれがある」としています(私的独占、取引妨害等)。

 さらに、同報告書は、「そもそもSIMロックはMNOの都合により設定されているものであり、当該要件が満たされた場合には、MNO自らがSIMロックを解除することが望ましい」とまで述べています。

 その背景としては、SIMロックがあることによって、端末の中古市場が機能しないこと、また、MVNOを排除する効果があることが考えられます。

 このように、現在のMNOの携帯電話販売の仕組みは、MVNOなどの他の事業者の事業活動を排除するおそれがあり、それが、大手3社による寡占化の進展と携帯電話料金の高止まりに繋がっていると言えます。

※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

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