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物に「痛い!」と言ってもらえる!?非破壊検査技術AE法

明治大学 理工学部 准教授 松尾 卓摩

物の発する音を「痛い」と解析する非破壊検査のAE法

 非破壊検査技術とは、簡単に言うと、物を壊さないで中の状態を検査する技術のことです。

 ご年配の方であれば、八百屋でスイカを買うとき、まさか店先でスイカを切ってみるわけにはいかず、スイカをポンポンと叩いて実のつまり具合を確認した経験があるのではないでしょうか。イメージとしては、それと同じです。

 稼働中のインフラ設備等を壊したり切断したりすることなく、内部の状態がどうなっているのかを調べるのです。

 その方法は、音や光や画像など様々ありますが、音を活用した技術として、アコースティックエミッション(AE)法があります。

 実は、物からは、損傷や損傷に起因して音が発生しているのです。その音を検知して解析するのがAE法の技術です。

 例えば、各地に取り付けられた地震計も同じような原理です。地中内部のプレートの境界に、割れたりずれるという“損傷”が起きると、振動が発生します。地震計はそれを検知し、その強さや、震源地の距離を表すわけです。

 これと同じように、構造物の壁面や設備の各部にセンサーを取り付け、その部材から発生する音を取り込み、その音が部材の損傷の音なのか、それはどこら辺で起きているのかを解析するのです。

 検査員による検査方法にも打音があるように、音で物の異常を検知する方法はずいぶん昔からありました。

 しかし、音をキャッチしても、その音が損傷の音なのか、損傷であればどの程度の損傷なのかよくわからず、解析するにも数十時間かかることもありました。なぜならば、例えば、今日のセンサーで実験室で実験を行うと、物から発生する音は、一日に数万にも及ぶのです。

 人の耳では聞き取れないような高い周波数の音も多いので、普通に生活していると気づきにくいですが、物は様々な、たくさんの音を発生しているのです。それを一つ一つ解析するのは、気が遠くなるような作業でした。

 それが、近年のコンピュータやAIの発達にともなって、たくさんのデータを処理することができるようになり、短時間で解析できるようになってきたのです。

 つまり、物が損傷する音を、物が発する「痛い」と捉えることができるようになったわけです。

 さらに、その「痛い」が、虫歯の初期のような「痛い」なのか、骨折のような「すごく痛い」なのか、もう限界に近い「超痛い」なのかも簡単にわかるようになってきたのです。

 このAE法は、もう様々なところで実用化が進んでいます。インフラ設備のコンクリート部分であったり、特に、プラントや発電設備、石油の備蓄タンクなど、大型の施設での活用が進んでいます。

 このような大型施設を、検査員が隅から隅まで検査するのは大変な作業になりますが、センサーを各所に取り付けておけば常時監視ができ、異常音をキャッチしたときは、その周辺を重点的に検査すれば良いので、作業の効率化と人手不足に対応することができるわけです。

 例えるなら、人は病院で、親指の付け根が痛いとか、胃がキリキリ痛いとか訴えますが、それは、痛いところを早く検査して、必要な治療をしてもらうためです。

 それと同じように、物の損傷箇所を素早く的確に検査し、補修するために、物に「どこそこが痛い」と言ってもらおう、というのが非破壊検査のAE法なのです。

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