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2018.11.07

IPOバブルは金融リテラシー欠如の表れ!?

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自らの金融リテラシーを高める意識が大切

萩原 統宏  投資とは、投資家から見れば、自分の資産を効果的に増やすことですが、経済活動として見れば、個人の余裕のあるお金をベンチャー企業などに回し、そうした新興の企業を成長させることによって、経済を活性化させるという効果もあります。元本が保証された銀行預金が増えるばかりでは、そのような効果は期待できません。

 なぜ、日本では個人投資家が増えないのか。言い換えると、リスクをとろうとしないのか。まず、余裕のあるお金がないということがあるのかもしれません。リスクがとれるはずの若い人や働き盛りの世代の実所得が伸びていないためです。

 しかも、日本では依然として持ち家志向が強く、余裕ができれば住宅購入に回されます。実は、リスクという意味では、株式投資よりも、不動産の方が高いのです。ローンを使って住宅を購入した場合など、住宅の価値よりも、ローンの残額の方が多いということは、よくあることです。

 逆に、株式投資はリスクが高いと思われていますが、長期で見れば、資産は増えることが多いのです。例えば、2008年、株式市場はリーマンショックで落ち込みますが、10年後のジャスダック指数は、2008年のプラス200%に達しています。

 日本人は金融リテラシーが低いのだと言われます。実際、金融リテラシーのテストを行うと、日本人は諸外国に比べて点数が低いという結果が出ています。最近は、高校などでも金融教育に力を入れたり、金融機関なども専門知識をよりわかりやすく説明したり、金融教育のために大学に寄付をしたりしています。それに対して、学生や一般生活者の皆さんも関心をもち、学ぼうとすることが必要だと思います。

 「貯蓄から投資」と盛んにいわれると、ニーサを始めるよりIPOバブルに乗ろうとしたり、リスクの高い不動産ローンを平気で組むことも、ある意味、日本人の金融リテラシーの低さの表れとも解釈できます。結果的にリスクのある投資をしないことに決めたとしても、知識が無いから投資しないのではなく、知識に基づく判断の結果として投資をしないことに決める方が好ましいことは言うまでもありません。

 さらに、将来の明るいイメージをみんなが共有し、期待がもてる社会状況を構築していく政治の力も必要でしょう。目先の可処分所得が増えればリスクを取りやすくなるのは当然ですが、自分の将来に対する、楽観的・前向きなイメージを持つことによってリスクを取るようになれば、それが経済状況を好転させ、個人の実所得を高め、さらなる投資が社会を活性化させていくという好循環を生むことにもなります。

 経済の成長力を高める目的において、個々人の金融リテラシーを高めることは有効な影響を持ちます。私自身も含め、金融教育に課されている責任は大きいと思っています。

>>英語版はこちら(English)

※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

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