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IPOバブルは金融リテラシー欠如の表れ!?

明治大学 商学部 教授 萩原 統宏

株の購入には、市場全体の動きを見ることも重要

 では、なぜ、IPOバブルのようなことが起きているのか。ひとつには、公募価格が少しディスカウントされ過ぎているということがあるのではないでしょうか。公募価格を高く設定して、公開後、買い手不足で株が値崩れを起こし、公募価格を下回る価格で売買されることは避けたいという思いが企業側にはあるのかもしれません。しかし、公募価格よりも初値が大きく上回るケースが、逆のケースより、あまりにも多いのが昨今のIPOの実情です。

 投資する側には、マザーズに上場されるような新興の、いわゆるベンチャー企業を応援し、長期的に育てていきたいという思いもあります。従来にはない発想や技術をもった新しい企業が伸びていくことは、日本の経済の活性化にも繋がり、結果的に大きな投資利益が得られる。そうした思いをもっている投資家ならば、初値が多少高くても、長期的な視点から期待を込めて株を購入すると思います。

 一方で、その企業がもっている技術や、あるいは業績などは考慮せず、期待や評判だけで株を購入する人も多いようです。

 例えば、先に述べたフリマアプリの企業の場合、営業赤字であり、黒字になる見込みは立っていないと公表しています。それでも、公募価格に対してプラス66.6%の初値がつきました。おそらく、こうした企業の情報開示を確認し、分析するよりも、活発な広告によってイメージを高めたためだと思われます。

 確かに、株価は、業績や客観的な情報だけでなく、たくさんの投資家たちの持つ将来予想や企業イメージ、いわゆるマインドによっても影響を受けます。それがIPOバブルに繋がっている面もあります。

 実は、投資家たちのこうしたマインドは、市場全体の動きに表れます。例えば、2017年のジャスダック指数は非常に右肩上がりでした。投資家たちは強気だったわけです。このような上がり相場のときは、株を長期的に持つことを考えているならば、公募価格であろうと、多少高くても初値であろうと、どちらでも早めに買えば良いということになります。

 逆に、2018年に入ってからは、じわじわ下がっている状況です。市場全体が弱気になっているのです。このようなときは、初値に飛びつかず、慎重に判断する方が良いでしょう。実際、ほとんどのIPOが公募価格より高い初値をつけた後、徐々に値を下げているのです。上場後に値下がりすることが多いことが、公募価格で買って初値で売るという短期投資に拍車をかけているとも考えられます。

 「貯蓄から投資へ」という流れを促進するためには、長期的な観点に立った投資が前提になります。このためには、投資家が、バブルに踊らされない、賢い株式投資を行えるようになることが必要です。その一つの方法として、企業の個別の情報を綿密に分析して予想を立てるだけでなく、市場全体の動きにも注意し俯瞰的に見ていくことが必要と考えます。

 とはいえ、一般の投資家がこうした作業を行っていくのは大変だと思います。実は、近年は、企業の情報開示だけでなく、証券会社や金融機関が実に様々なデータをホームページなどに公表しています。インターネットが発達する以前と比べると、その情報量は膨大といって良いでしょう。

 ところが、そうした大量の情報を本当に活用するためには、相当の予備知識が必要で、一般の投資家には難しいのが実情です。そこで、いま増えているのが、分散投資型の投資信託です。プロのファンドマネージャーに運用を任せることは、投資家にとって手間がかからないだけでなく、理論的にも賢明な資産運用だと思います。

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