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排斥や格差の問題を防衛性という視点から考える

脇本 竜太郎 脇本 竜太郎 明治大学 情報コミュニケーション学部 専任講師

排斥や格差の問題にどう向き合うか

 外集団の排斥や集団間の葛藤、また格差の合理化といった問題が、人間が存在論的恐怖に脅かされているために、つまりは人間の防衛性ゆえに生じていると言うと、それが人間の性質に根ざした、解決不可能な問題に思えるかもしれません。しかし、そうではありません。文化的世界観や自尊感情以外に、他者との関係性によって存在論的恐怖を管理することはできます。実際に、他者との良好な関係を意識している状態では、存在論的恐怖は外集団排斥を強めないことが知られています。同様に、自由主義的な価値観の意識化や、外集団と内集団の共通性の知覚、全人類に関わる問題の意識化は、存在論的恐怖が外集団排斥につながる事を防ぐ効果を持っています。これらに共通するのは、内集団と外集団を区別せず、共通する何らかのものを持った仲間として捉える社会的包摂の視点を与えていることです。格差の合理化については直接的な研究がないため今後の検討が必要ですが、同様の方法で改善が可能なのではないかと考えています。外集団排斥や格差の合理化が人間の不安や防衛性によって生じている側面があることを知り、社会的包摂の視点に立ったより生産的な形の防衛反応に置き換えていくことは、1つの方策だと考えられます。
 排斥や格差は、内集団と外集団を区別することから始まります。人間が現実的に無意味な基準でグループ分けされた場合にも内集団ひいきを行ってしまうことを考えれば、ウチソトの区別というのは実に曖昧なものです。つまり、現在他者から内集団とみなされ有利な立場にある人であっても、いつ他者から外集団と見なされて排斥され、不利な立場におかれるかわからない、ということです。そのような危うさの認識は不足しているように思います。排斥や格差を容認する限り、人は潜在的にこの危うさに付き合わなければなりません。そのような無用な苦しみを避けるためにも、排斥や格差の問題について考え、それを改善していかねばならないと考えています。

※掲載内容は2014年1月時点の情報です。

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※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

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