一人勝ちを生み出さないのがゲームの原理
ルールがあり、勝敗をつけるのがゲームです。その意味では、経済的にも政治的にも勝者を目指すアメリカの姿勢は非難するものではありませんが、一方で、絶対的な勝者、つまり一人勝ちを生み出さないという仕組みを人類は長い歴史の中で培ってきました。先に、この仕組みは日本社会において強く育まれたと述べましたが、世界中の多くの共同体の根底にもあるものです。例えば、アメリカのインディアンの各部族は、侵入してきた白人に対して連合軍を組み、騎兵隊を全滅させるところまで追い詰めますが、各部族の上に立つ王(一人勝ち)を出そうという話が出るとバラバラになり、それぞれの領地に戻ってしまいました。一人勝ちとは、自分と異なるルールをもつ者たちに勝ち続け、自分のルールに組み込んでいくことですが、人類が繰り返してきたゲームには、勝者と敗者が決まればそれでゲームセットで、あらためてゲームをするときは、またゼロからスタートする原理がありました。自然と、絶対的な一人勝ちが生まれることはなく、永久に敗者であり続けなければならない者もいないのです。これは、人類が生み出したゲームのポジティブな面であるといえます。
日常がゲーム化しているいま、一方でゲームの負の側面が現われ、それを意図的に利用しようとする動きも現われますが、他方でゲームのポジティブな面は、これからの世界にとって、非常に示唆に富んだビジョンを私たちに与えてくれていると思います。
※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。