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ゲームで一人勝ちは楽しくないことを、実は、みんな知っている

中沢 新一 中沢 新一 明治大学 研究・知財戦略機構 特任教授(2021年3月退任)

人々の日常の生活から、各国の政治の動向まで、いま、世界はゲーム化し始めていると、本学「野生の科学研究所」の中沢新一特任教授は指摘します。その意味を解明する目的で、「ゲーム学」を興しました。

人類の文化はもともと遊びの諸形式から生まれた

中沢 新一 近年、国際政治を解明する上で、「ゲーム理論」が用いられたりしていますが、私が始めた「ゲーム学」は、それとは異なります。オランダの歴史学者であるヨハン・ホイジンガは、「ホモ・ルーデンス」の中で、人類の文化はもともと遊びの諸形式から生まれたことを明らかにしています。例えば、ものを交換することの楽しみは、功利的、実利的な行動へと発展し、それは経済活動となっていきます。絵の上手な者や、音楽の上手な者はそれを競い合うようになり、やがて芸術へと進化します。国を治めることや国際政治も、功利的、競争的というゲームの要素によって成り立っています。まさに、遊びやゲームは、人類の諸活動の根源であり、文化の本質であるといえます。そこで、ゲームという視点から現代社会の様々な活動をあらためて捉えなおすことは、人類を考える最も根源的な学問になると考えるのです。

 逆にいえば、いま、行われているゲームから、それを作った共同体の特質を捉えることも可能です。例えば、コンピュータゲームが世界に拡がっていったとき、日本人が作るゲームソフトは世界を席巻しました。日本のゲームは繊細であるとともに、人類が太古から行ってきた「ゲーム」の原理にある、「絶対的な勝者をつくらない」という仕組みを組み込んでいたことも、その要因であったと思います。もともと、あらゆる共同体の根底にあったこの仕組みは、日本社会において無意識のうちに強く育まれ、それは日本文化に色濃く反映されてきました。それが、コンピュータゲームという形の中に投影され、世界中の人々にも心地良かったのだといえます。「絶対的な勝者をつくらない」という人類のゲームの原理は、実は日本のマンガやアニメにも注ぎ込まれています。それが、いま、クールジャパンとしてもてはやされているものの本質だと考えます。ところが、盛んにクールジャパンと言っていながら、なにがクールなのか、よくわかっていないため、日本文化の表層的な部分を取上げるだけにとどまっているケースが多いのです。そこで、いま、世界中で注目されるコンピュータゲームというフィールドにおいて、日本のゲームクリエイターたちは、いままで日本人が無意識のうちに育んできた日本文化の本質をあらためて捉えなおす作業に真剣に取組んでいます。実は、その作業に関わるのも、「ゲーム学」なのです。

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