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2018.07.11

民主主義と軍事主義。果たして共存は可能か?

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民主主義の成熟こそ平和社会を創る礎

纐纈 厚 しかし、多くの国民は中国の軍拡や北朝鮮の脅威が解消されないかぎり、強力な防衛力としての自衛隊の強化は必要だとする意見が圧倒的です。確かに南北首脳会談や米朝首脳会談が開催されるなかで、東アジア地域の軍事的緊張は軽減される方向にありますが、最低限度の防衛力は「備えあれば患いなし」ではないか、とする素朴な防衛力必要論が定着しています。でも日本の強大な防衛力なるものが、北朝鮮を含めた周辺アジア諸国に脅威を与えている、という実態には無頓着すぎます。また、防衛力とはいえ、侵攻可能な軍事力に転化するものですから、現在は防衛力と攻撃力に区別はつかないのです。取り分け、日本の正面整備体系は、どう見ても外征型と言って、海外で一定の作戦に対応可能な、文字通り強力な軍事力を保有しています。日本は既に事実上の空母3隻を保有しているとするのが、世界の軍事常識となっています。それを海上自衛隊は大型輸送艦と称しています。もちろん、アメリカ海軍のように10万トン級の強大な正式空母ではありませんが、広大な飛行甲板に対潜ヘリを搭載する軽空母です。専守防衛を基本とする自衛隊には相応しい装備とは言えません。

 いま、多くの日本人に関心が深いと思われる中国の海洋進出も問題となっています。これも私に言わせれば、歴代の中国王朝が北方民族の侵攻を万里の長城で防ごうとしたように、海洋進出して軍事基地を設営し、アメリカなどの軍事侵攻を防ぐ、〝海の万里の長城〟を築いているとする見方もできます。中国がかつてのように外国から侵略され続けた歴史の轍を二度と歩まないため、営々として防御線を張っているのです。また、それによって中国共産党は、14億の人民を統治する正統性を確保しようとしているのではないかと。そもそも北朝鮮に日本を侵略する能力も意図もなく、中国が遠くアメリカや、隣国日本に向けて侵攻するメリットは皆無です。なぜ、それを脅威として受け止め、軍拡に走る必要があるのでしょうか。ゆめゆめ政治のプロパガンダに乗せられてはなりません。

 中国やアメリカのような軍事大国に、そもそも軍事力で張り合おうとする考え方自体を改めていく必要があります。日本は軍事力ではなく、平和憲法を基盤に据えた平和力で、まずはアジア地域に平和共同体を創り上げていくために尽力しなければならないと思います。軍事力は軍拡の利益構造を担保するものですが、平和社会を担保するものでは決してないのです。そのことを私たち日本人は、戦前の歴史から学んでいるはずです。そうしたなかで、まずは文民統制を機能強化し、民主主義をしっかり守ることこそ、平和を守ることに結果するのです。

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※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

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