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がん要因の45%は予防可能!! それを知らずに生活するのは危険

明治大学 文学部 専任講師 宮脇 梨奈

効果的なヘルスコミュニケーション戦略を構築するために

 また、私たち研究者は、ヘルスコミュニケーション戦略の構築やその活用に力を注いでいきたいと考えています。ヘルスコミュニケーションとは、個人およびコミュニティが健康増進に役立つ意思決定を下すために必要な情報を提供し、意思決定を支援する、コミュニケーション戦略の研究と活用とされています。がん予防情報を普及啓発していくためには、マスメディアと医療を繋ぐきっかけを作る取組みを行うこと、双方の話を聞いて、なにが必要なのかを検討すること、双方に現状を提示して、なにをすべきか提案したり、考えてもらったり、さらに、双方の協力によって情報発信を行ったとき、その効果を調査し、評価し、次に繋げていく活動を行うことが、私たち研究者の役割であると考えています。実は、欧米ではこうした活動は進んでいます。例えば、アメリカでは、CDC(アメリカ疾病予防管理センター)やNCI(国立がん研究所)などが資金を出し、ハリウッド・ヘルス・アンド・ソサエティが設立されています。名前の通りハリウッドに立地する組織で、がん研究、医療、ヘルスケアの専門家と、マスメディア関係者や情報の表現者がスムーズに協働できる体制を整えたのです。これにより、がん予防を啓発するための効果的な情報発信や、表現手法が考えられ、その後の効果測定も緻密に行われています。先に述べた若年層への教育も含め、国民のがん予防について、アメリカは国を挙げて行っているのです。

 それに比べて日本では、マスメディアが伝えたい情報を独自に発信することが比較的多く、その結果、がんの予防情報は隅に追いやられているように思います。しかし、例えば、利益追求のマネジリアル・マーケティングではなく、社会的主張で共感を得ることを目指すソーシャル・マーケティングの手法であれば、がん予防情報も一般の人にもっと届きやすくなるかもしれません。 がんを撲滅するには、もちろん医療の進歩が重要ですが、特に予防の分野において進歩したことを、一般の人たちに認知してもらい、実践してもらうには、ヘルスコミュニケーションがとても重要なのです。餅は餅屋といいますが、ヘルスコミュニケーションの戦略を研究者だけで考えることは困難です。様々な専門家同士が上手に協働し、さらに、教育の現場から一般の人たちのヘルスリテラシーを向上させていくことが、がんの罹患数を減らし、がんによる死亡を減らしていくことに繋がると考えます。

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※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

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