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炎上CMも流行現象のひとつ。そこから見えてくるのは…

明治大学 文学部 教授(2018年3月31日退職) 市川 孝一

「新語・流行語大賞」といえば、いまや年末の年中行事のようになっています。もちろん、流行とは言葉だけではなく、様々な形態があり、次々に新しい流行が現れては消えていきます。流行語を含め、この移ろいやすく瑣末な流行現象に、注目すべき点はあるのでしょうか。

時代の「社会心理」を映すのが流行現象

市川 孝一 流行から時代の「社会心理」を読み解く、という学問領域があります。例えば、様々な流行現象は世の中の動きや時代を先取りしていることが少なくありません。とりわけ、若者文化の流行現象は、既存の文化や体制に対する新たな文化の創出という意味で、カウンター・カルチャーとして常に先見性を発揮してきました。流行現象から社会心理を読み解くということは、その時代のあり方を捉えるとともに、社会の動向や流れを捉えることで将来予測にもつながるわけです。

 少し詳しく説明しましょう。まず、「社会心理」とは何かというと、「イデオロギー」とともに社会意識のサブ・カテゴリーとして捉えられます。ある社会集団の成員によって共有される意識形態が「社会意識」ですが、イデオロギーが、特定のイデオローグの思惟の所産で精緻な観念体系であるのに対し、社会心理は、未組織の大衆の思想を指します。いわば、「普通の人々のものの考え方や感じ方」が社会心理というわけです。それぞれの時代には、その時代特有の社会心理があり、それは当然のことながら、時代とともに変化していきます。この社会心理の時代的変遷を追うのが、「社会心理史」という研究領域です。一般の人たちにとっては、あまりなじみがないかもしれませんが、私は、最も興味深い研究対象として注目してきました。そして、この社会心理を一番わかりやすい形で体現しているものが、様々な流行現象なのです。

 「では、その「流行」とは何かというと、まず、2つの代表的な定義があります。ひとつは、流行現象を担う人間に注目し、「集団行動」として捉えるものです。もうひとつは、流行を社会現象として注目し、「集合現象」として捉えるものです。つまり、流行とは、一定の人々が一定期間、周囲からの心理的圧力によって、同一の、あるいは類似の集団行動を示すこと。また、新しい行動様式や思考様式が社会や集団のメンバーに普及していく過程であるといえます。このように定義される流行現象が現わしているものが、その時代の大衆の考え方や感じ方である社会心理というわけです。

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