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「沖縄振興予算」という呼称が、誤解を招いている

池宮城 秀正 池宮城 秀正 明治大学 名誉教授(元政治経済学部教授)

沖縄県の経済成長率は全国で最も高くなる

池宮城 秀正 また、沖縄県の経済は米軍基地に依存しているというのは誤解で、むしろ、過重な米軍基地は、都市造りや地域の振興開発にとって弊害となっています。例えば、いま沖縄ではミニ・バブルが起きており、住宅地の価格が九州で最も高いと言われています。それは、米軍基地の存在によって有効活用できる土地が限られているからです。その結果、沖縄県の持ち家比率は東京の次に低い状況になっているのです。

 実は、沖縄県財政は、弾力性を示す経常収支比率や、収入に対する借金返済の割合を示す実質公債費比率、将来支払う借金の割合を示す将来負担比率等も、概ね、都道府県平均を下回っており、これらの指標の点から沖縄県の財政運営は健全であると言えます。さらに、いま、日本は少子高齢化に歯止めがかからず、将来の労働力人口の減少が問題となっていますが、沖縄県の合計特殊出生率は全国一で、高齢化率も最も低いままです。日本経済研究センターは2020年までの10年間、沖縄県の経済成長率が全国で最も高くなると推計しています。いま、沖縄県経済が基地依存経済であるとの誤解を払拭するとともに、日本経済への貢献といった視点から地域経済の活性化に着実に取り組むことが重要と考えます。

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※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

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