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「沖縄振興予算」という呼称が、誤解を招いている

明治大学 政治経済学部 教授 池宮城 秀正

沖縄振興予算は全ての都道府県に交付されている財政資金と同じ

 次に、国庫支出金ですが、これは、国が使途を特定して地方自治体に交付するもので、当初から国の政策を遂行する目的を持っています。所管府省ごとの交付になっているので、各都道府県は、各府省に予算要請をすることになります。ところが沖縄県は、沖縄振興特別措置法に基づき内閣府沖縄担当部局予算として一括して計上される仕組みになっています。この一括計上される国庫支出金、及び国直轄事業費の合計が、いわゆる沖縄振興予算と呼ばれているものです。つまり、呼称が沖縄振興予算というだけで、中身は全ての都道府県に交付されている国庫支出金、及び国直轄事業費と変わらないのです。しかも、沖縄県の人口一人当たり国庫支出金は47都道府県中4番目です。また、沖縄振興予算は那覇空港や宮古島の空港の整備、八重山の新空港建設などに多くが充てられてきています。これらの空港はもちろん民間機も利用しますが、国防目的も大きいのです。事実、自衛隊機の発進により、民間機が長時間待たされることも頻繁に起こります。まさに、国の政策を遂行するための予算である国庫支出金や国直轄事業に相応しい使途であり、「沖縄振興のみを狙いとした予算」とは言い難いのです。

 このほかに、市町村には、総務省所管の「国有提供施設等所在市町村助成交付金」(いわゆる基地交付金)が交付されています。これは、米軍基地や自衛隊基地に関する固定資産税などに代替する交付金です。同じく「施設等所在市町村調整交付金」は、米国資金による取得資産や基地外に居住する米軍人、軍属から税が徴収されないため、それに代わる交付金です。また、防衛省所轄の「防衛施設周辺の生活環境の整備等に関する法律」に基づく交付金もあります。これは、基地が周辺住民にとって迷惑施設であること、つまり外部不経済に対する補償です。これらの交付金は沖縄県下市町村に限ったものではなく、米軍基地や自衛隊基地が立地しているすべての地方自治体に交付されています。

 このように客観的数字を基に見てくると、沖縄県が、国から他の都道府県とは別枠で補助を受けているということが誤解、錯覚であることがわかると思います。むしろ、沖縄県にとっては、日本全国に便益をもたらす純粋公共財である米軍基地の存在によって過重な負担を強いられているのに対して、その負担とイコールとなる便益になっていないのがわかります。先にも述べたとおり、日本中の人が、負担と便益はイコールであるべきという認識の基に、沖縄県の基地問題を考えてほしいと思います。

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