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晩婚化、晩産化、そして収入減が招く少子化

 結婚相手の条件として考慮・重視する点を尋ねた調査によると(国立社会保障・人口問題研究所編2012年「第14回出生動向基本調査 結婚と出産に関する全国調査 独身者調査の結果概要」)、男女ともに高い割合となっているのが、「人柄」とともに、「家事の能力」「(自分の)仕事への理解」であることがわかります。つまり、男性が女性に求めることを、女性も男性に求めるようになっているのです。その理由は、女性は男性の「経済力」を考慮・重視しますが、昔のように男性に完全に依存するつもりはなく、夫婦生活に必要な収入を共働きによって得ようと考えるようになってきたからです。ところが男性は、夫は外で働き、妻は家庭を守るべきだという伝統的性別役割分業観が強く残っている傾向があります。その結果、男性が非正規雇用者で収入が少ない場合、結婚することができず、未婚率がひじょうに高くなってしまいます。

 また、グラフ3を見ると、さらなる問題点が浮かび上がります。結婚前、正規雇用に就いている女性の割合は85.7%であるのに、第1子出生後は21.9%になっています。それに反して無職の割合は、結婚前は4.5%だったのに、第1子出生後は75.5%にも増えています。予定の子ども数を実現できない理由を尋ねた調査(国立社会保障・人口問題研究所2013年「第14回出生動向基本調査 結婚と出産に関する全国調査 夫婦調査の結果概要」)によると、トップは41.6%で「年齢や健康上の理由」。2番目は30.5%で「収入が不安定なこと」です。ちなみに、マスコミなどでも大きく取上げられている「保育所などがないこと」は12.7%です。つまり、晩婚による晩産化とともに、共働きから、夫だけの片働きになることによる収入減も、予定の子ども数(平均2.07人)を実現できない理由となっているのです。

グラフ3 自治体における少子化調査において第2子出生まで回答している2270ケースのイベントごとの就業形態の変化
グラフ3 自治体における少子化調査において第2子出生まで回答している2270ケースのイベントごとの就業形態の変化

必要なのは、20歳代で結婚し家族形成できる環境の整備

 少子化の原因を人口学によって分析していくと、対策も見えてきます。20歳代後半までに共働きで結婚することができ、女性は出産後も就業継続ができるような社会の実現です。そのためには、男性は家事や育児に参加し、また、公的機関や地域社会は育児支援の推進など、本当の意味での“男女共同参画社会”を形成していくことが必要です。そして企業は、バブル経済崩壊後に生き残るために懸命に進めた経営合理化の一環として、正規雇用を減らして非正規雇用を増やしたことが、未婚や晩婚、晩産を招き、結果として少子化によりマーケットを小さくしてしまったという合成の誤謬があったことを認識し、長時間労働の排除やIT環境を活用した在宅勤務の拡大などの雇用や労働慣行の変革に取組んでもらいたいと思います。私は、内閣府の少子化対策の有識者会議などで、政府にこうした分析と提言を続け、本当に必要な対策を求めていきます。

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※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

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