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2024.02.01

植物のストレス耐性遺伝子が、食糧危機の救世主に

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さまざまなストレスの耐性に関わる共通の因子を明らかに

 植物に環境ストレスを与えると、成長が遅くなることがあります。これは、あえて成長しないことで、成長に必要なネルギーをストレスへの適応に振り分けていると考えられます。このとき成長を一時的に止める役割を担っているのが、ANAC044とANAC085という遺伝子だということを明らかにしています。しかも、この2つの遺伝子は、高温でも低温でも塩害でも、ストレスがかかれば成長を止める働きをする。逆に言うと、この遺伝子がなければ、どのようなストレスがかかっても成長を続けてしまうというわけです。

 ほとんどの陸上植物にANAC044、ANAC085は存在しています。一方で、水中にいるような植物は、これらを有していません。水の中は、水分はもちろん栄養分も多く、地上に比べれば温度も安定していて、紫外線の影響も受けにくい。植物にとっては比較的過ごしやすい環境なのです。植物はもともと水中で生まれましたが、陸上化したことによってさまざまなストレスを受けることになり、この遺伝子を獲得したと考えています。

 特定のストレスには強いものの、ほかのストレスには弱いとなると、栽培できる環境条件が限られてしまいます。また、ストレス耐性に関わる遺伝子は、植物にとってみれば、ストレスがかかったときにだけ働くことが理想です。常に頑張り続けている状態にすると、通常時の生育が悪くなってしまいます。

 私は特定のストレスではなく、複合的なストレスにも強い作物を開発したいと考えています。さまざまなストレスを同時に処理したとき、共通して働いているストレス耐性に関わる因子を明らかにすれば、可能性はあります。現在、応用への期待を込めて研究を進めているところです。

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※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

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