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ロボットがやわらかくなると社会が変わる!?

新山 龍馬 新山 龍馬 明治大学 理工学部 専任講師

やわらかなロボットはエモーショナルな価値を生み出す

 また、やわらかいロボットは、ものの生産だけでなく、well-beingやケアにも関わっていけると考えています。

 例えば、数年前に公開された「ベイマックス」という3DCGアニメーションの映画があります。ここに登場するロボットのベイマックスがまさにそうです。やわらかいロボットのベイマックスは人の健康状態を気にかけ、握手やハグをすることができます。それは、人の心と体を癒やしていきます。

 逆に、ベイマックスはなにかを生産することはしません。その意味では、人工の労働者という概念から始まった「ロボット」という言葉にはふさわしくないのです。

 しかし、ベイマックスは、人との関わりの中でエモーショナルな価値を生み出していきます。それは、従来は、人と人、あるいは、人と動物などの間で育まれるものでした。それが、ロボットにも可能になってくるかもしれないのです。

 そのとき、やわらかい、ということが安心や親しみの大きな要因になるでしょう。

 また、やわらかいロボットによって、楽しいというエモーションを生むことも考えられます。

 もちろん、機械が人に楽しさを提供することは従来にもあります。しかし、その場合は、機械が生み出す状況が楽しいのであり、機械そのものが好ましいということはあまりなかったでしょう。

 例えば、私も開発にたずさわっている「poimo」というスマート・モビリティがあります。poimoの形にはいくつかの種類がありますが、最新のソファ型は、ソファがそのまま街中をうろうろと動き回ることをイメージしています。

 このpoimoにはコントローラーが付いていて、ソファに座った人はそれで操縦ができます。将来的には、行き先を指定するだけで、自動的に移動する機能を考えています。

 こんなソファが街中をうろうろしていて、人は自由に乗り降りができます。いわば、シェアバイクやキックボードのようなイメージですが、poimoには移動の早さはありません。

 ふかふかのソファに座り、移動の間、本を読んだり音楽を聴いたり、好きなように自由に時間を過ごすことができる楽しさ、快適さを提供するのです。

 このとき、重要なのは、見た目や触り心地のやわらかさです。人の体を包み込むようなやわらかさから、ホッとする、癒やされる思いが生まれると思います。こうした感覚を実現するために、poimoは素材に特殊な布を使い、空気で成形する風船型のソファになっています。

 こうした試みは、従来の硬いロボットではできなかったものです。もちろん、金属製のロボットも、今後、さらに発展していくと思いますが、一方で、従来にはなかった、やわらかいロボットが、ロボットというものの新たな可能性を拡げていくと考えています。

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