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2022.10.26

血液はサラサラだけでなく、ドロドロも必要!?

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従来の計測法を超えるEMS粘性計測システム

 実は、粘度を測る、この2つの方法には一長一短があります。例えば、細管法は計測精度が高い一方、洗浄やメンテナンスが面倒という点と、ずり速度の違いによる粘度の変化を計測しづらい点があります。

 ずり速度とは、簡単に言えば、流れの緩急です。例えば、ペンキは、刷毛を動かして塗る(大きなずり速度)ときは粘度が低くなって塗りやすく、塗りつけたあと(ずり速度ゼロ)は粘度が高くなって固定しやすくなります。

 同じことは、私たちの身の回りの様々な製品にあります。ハンドクリームは、容器からすくい取る(小さなずり速度)ときは粘度が高くないと垂れ落ちてしまい、すくい取りにくいでしょう。でも、手に擦りつける(大きなずり速度)ときは粘度が低くないとネバネバして塗りづらくなります。

 このように、同じ液体でもずり速度によって粘度が変化する特性を非ニュートン性と呼びます。細管法では、この非ニュートン性を調べることが難しいのです。

 回転式粘度計では、こうしたずり速度の変化を、回転子の回転数を変えることで再現できるメリットがあります。

 一方、回転子を回すためのモーターやシャフトなどの機械的接触によって摩擦が生じるため、それが計測値に影響を与える点があります。それは、特に、サラサラした液体の計測値では相対的に大きくなり、大きな誤差値になってしまうわけです。

 そこで、私たちが開発しているのがEMS粘性計測システムです。

 これは、簡単に説明すると、まず、磁石を向かい合わせに設置します。すると、その中央部に磁場が発生します。そこに金属片などを置くと、その金属に誘導電流が流れます。

 ここで、磁石たちを磁場の円周を回るように動かすと、電流と磁場が直交することで発生していた力が、磁場の動きに追随するように働きます。それによって、金属片は磁石たちの円周運動に合わせてその場でクルクル回転するのです。

 このとき、機械的に回っているのは磁石の方で、金属片は機械的な接触のない回転子となるわけです。

 そこで、試料となる液体を入れた容器にこの金属片を入れて磁場の中央に置くと、金属片の回転に働く抵抗力は、その試料の粘性だけということになります。つまり、誤差のない粘度が計測できることになるのです。

 このように、回転式粘度計の短所を改良する目的で開発したEMSシステムですが、実は、別のメリットが注目されるようになっています。それは、試料と金属片を入れた容器を密封できることです。

英語版はこちら

※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

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