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仮想通貨「ビットコイン」 ―その課題と可能性―

明治大学 商学部 准教授 浅井 義裕

経済学者・ハイエクとビットコインの親和性

浅井義裕 上述のように、先進国でもビットコインが普及する要因がないわけではない。世界的な金融危機の中、各国の中央銀行は金融緩和を推し進め、インフレーションを許容している。また、日本は政府が巨額の債務を抱えており、インフレーションが進む要因は整っているとも言える。つまり、価値が下がっていく通貨を使用しなくてはならないという点では、先進国も発展途上国も大きな違いはないかもしれない。
こうした状況の中で、思い出されるのはオーストリア生まれで、ノーベル経済学賞受賞者のフリードリッヒ・ハイエクである。ハイエクは、中央銀行を廃止し、通貨の自由市場を許可し、多様な通貨が発行され通貨発行主体同士が競い合えば、最も健全で安定した通貨が発展すると考えた。ビットコインは、ハイエクの考えに直結するものではないかもしれないが、現在の通貨体制の中で、「通貨」とは異なる選択肢を提供する存在であるビットコインは、ハイエクの目には、どう映るだろうか。
私の本来の専門は、貨幣論ではなく、保険リスクマネジメントであり、企業ファイナンスの中における保険の役割を研究対象としている。現在、企業が決済や送金等にビットコインを活用する例は少ないが、将来的にリスクマネジメントの観点から普及することも考えられる。たとえば、リターンを得るためにポートフォリオの中にビットコインを組み込む可能性もあるだろう。今後ビットコインが拡大していくのであれば、ハイエクの言うような「健全で安定した通貨」に進化していくことに期待したい。

※掲載内容は2014年6月時点の情報です。

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※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

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