
2023.02.03
明治大学の教授陣が社会のあらゆるテーマと向き合う、大学独自の情報発信サイト
安全にビッグデータを利活用するための法整備やルール作りは当然必要なことだが、同時に進めねばならないのはセキュリティ技術の向上である。ビッグデータの利活用に当たっては、データのより強力な秘匿性を確保することが求められる。その技術が、私の研究テーマの一つでもある「プライバシー保護データマイニング(PPDM=Privacy-Preserving Data Mining)」である。
データマイニングとは大量に蓄積されるデータを解析し、その中に潜む項目間の相関関係やパターンなどを探し出すことであり、PPDMは個人情報を秘匿したまま、暗号化技術によってデータマイニングを可能とする。実証実験では、がん患者とピロリ菌保有者の相対危険度(ピロリ菌保有者ががんに罹患する確率)を調べるため、双方のリストというパーソナルデータを暗号化して照合した。つまり対象者名は秘匿したままで、疾病とその原因との関連を解析。実験ではピロリ菌保有者のがんになる確率はそうでない人の9.7倍という、医師の経験値とほぼ一致する結果が得られた。こうした医療情報は、学術利用に限っていえば比較的利用しやすい仕組みができている。しかし、一般のデータ利用ではルールが確立されていない。PPDMの実用化が実現すれば、個人情報を保護しつつ企業が蓄積しているデータを利活用しやすくなり、ビジネスの可能性は大きく拡がることが期待される。