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手書き文字の味を活かした、きれいな自分だけの文字ができる

中村 聡史 中村 聡史 明治大学 総合数理学部 教授

観察し、徹底的に考えることが大切

中村 聡史 こうした、手書きとコンピュータ上のフォントとの融合文字を様々な分野で活用する研究も進めています。そのひとつが、マンガへの応用です。例えば、マンガの吹き出しなどに入る文字は、多くの場合、なんの工夫もなく従来のフォントが使われています。しかし、電子書籍のマンガなどであれば、その文字も柔軟に変更することができます。ここで、読者が男性の場合に、男性主人公のセリフ部分に読者自身の融合文字を当てたり、女性ヒロインのセリフに好きなアイドルの手書きの融合文字を当てたりすることで、マンガに対する没入度を高め、コンテンツをもっと楽しくできるのではないかと考えています。また、この方法を映画の字幕や、モニターに映し出されるカラオケの歌詞などにも適用することで、観ることや歌うことのモチベーションを高めることができるのではないかと期待しています。さらに、教科書体といわれるカチッとした書体で書かれることが多い教科書ですが、これが自分の融合文字になると、もっと読みやすく身近なものになり、理解しやすくなるのではないかなどの応用についても考えています。

 こうした発想を生むうえで大切なのは、徹底的に観察し、考え、そして自分なりの答えを蓄積してくことです。例えば、日常の中で出くわす使いにくいものとか、わかりにくいものに対して、ちょっと不満をもったり、イラッとしたりしても、引きずらずにサラッと流すということをひとはやりがちですが、それだと何も得るものがありません。そうではなく、よくその対象や使っているひとたちを観察し、どうしてこうなってしまったのか、どこに問題があるのか、どうやったら改善することができるのかということを考え、自分なりの結論を出してみようとすることが重要です。例えば、水の出し方がわかりにくい手洗いの蛇口や、押すのか引くのかわかりにくいドア、男子トイレなのか女子トイレなのかわからないサイン、ついつい書き損じてしまう書類など日常にたくさんあります。そのとき、なぜそうなっているのか理由や原因を突止めてみるのです。単純に反応が悪くなっているだけだったり、設置場所の都合だったり、文化的な都合だったり、翻訳しただけのためにわかりにくいのかもしれません。いろいろな疑問を考え、自分なりの結論を出すことを繰り返していくと、それが自分の知識となり、経験として蓄積されていきます。そして、何らかの問題に遭遇したときに、そうした蓄積が急に働き出し、問題を解決する力となります。また、そうした蓄積が急に結びつくことで、新しいアイデアが生まれますし、そのアイデアが他の蓄積と有機的に結びつくことによって、より良いものへとすることができます。例えば今回紹介した手書きに関する研究も、徹底した観察と思考から生まれています。こうした方法は、研究者だけでなく、ビジネスマンや主婦の方にも活かしていただける発想法であると思っています。

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※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

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