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2017.11.29

あなたのスマホは、あなたの情報を収集するスパイ!?

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個人情報を収集する技術はどんどん進化する

齋藤 孝道  個人情報の用途は広告だけだろう、と思っている人が多いようですが、本当にそうでしょうか。仮に企業側がそう言っているとしても、私たちは個人情報がどう管理され、どう扱われているのか、知る術がないのです。実は、このことが危機感を感じる一番の要因です。市民にとって、政府は、ある意味、監視が可能です。問題があれば議会で追及することができるし、選挙によって政権を変えることもできます。しかし、民間企業は、法律に違反していない商業活動であれば、公表する必要はありません。特に、海外企業による個人情報の収集に対して、私たち日本人のコントロールは及ばず、逆に、私たち一人ひとりを知り尽くした企業によって、コントロールされかねないわけです。実際、私たちは、知りたい情報も、欲しい物も、道を調べるのも、ITを利用するようになっています。主体的に決めているようで、実は、ITに決めてもらっているのではないでしょうか。ITの答えは正しいから、便利だからということでしょうが、IT企業は個人の情報を握っているのですから的確な指示ができるわけです。すると、その行き着く先はどうなるのでしょう。

 こうした状況に危機感をもち、ヨーロッパやアメリカは声を上げはじめているのです。その声が、ヨーロッパのサイトでのクッキーの利用通知機能を付けさせたと言いましたが、最近では、インストールされているアプリなどスマートフォンの内部状況が、ユーザー一人ひとりで異なることに目を付けた技術が使われはじめています。端末内部状況のデータを少しずつ集め、その差異によって個体を識別するブラウザ・フィンガープリンティングという技術です。この技術だと、ユーザーは個体識別のために情報が取られていることがわかりません。しかし、これによって個別のトラッキングが可能になるのです。また、スマートフォンの機種によってはGPSが作動していることを表示する機能を付けたものもありますが、最近では、GPSによらず、無線LANのアクセスポイントを追いかけることで、センチ単位の位置情報を集める技術も実用化されています。つまり、あなたがスマートフォンを使うだけで、あなたがどこにいて、どんな操作をして、どんなアプリを使っているのか、あなたにまったく知られずに把握することが可能なのです。注意して頂きたいのは、トラッキング技術自体が問題なのではなく、それを用いて、個人の行動や趣味嗜好をプロファイリングすること、さらに、我々のコントロールできないところでプロファイリング情報がやり取りされることがとても問題なのです。IT企業が技術を駆使して個人情報を収集しようとしている状況を、その端末を手放せなくなっている私たちはあまりにも無頓着でいるのではなく、少なくともリスクとして知っておく必要があると思います。

※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

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