我々には、頭の中を覗かれない権利がある

　IT企業による、よく知られている情報収集は、いわゆるWebトラッキング（追跡）によるプロファイリングです。スマートフォンなどのユーザーが、システムをどう操作しているのか、どういうページを見ているのかなどを継続的に追いかけ、データとして収集する活動です。こうした活動をするためには端末を識別する必要があります。たとえば、ヨーロッパのWebサイトを閲覧していると、Webサイトがクッキーと呼ばれる個体を識別する情報が使われていることが知らされることがあります。このとき、閲覧者はクッキーの利用の選択ができます。実は、以前は、トラッキングされていても、一般的なユーザーはそれを知ることもありませんでした。しかし、人にはプライバシーがあり、情報を追跡されない権利があることを、ヨーロッパが中心となって主張したことで、ヨーロッパでは同意を求めることになり、今後厳格化が予想されます。では、そのような声が日本でも上がっているのかというと、実は、ほとんど聞きません。トラッキングは、ユーザーに適した広告を出すためにやっているのだから、むしろ良いじゃないかとか、こんなことはどこでもやっている、気にする必要はないとか、法律上問題がなければ良いのではないか、などと思っている人が多いようです。確かに、改正された個人情報保護法などでも、Webトラッキングによるプロファイリングを規制しているものはありません。しかし、考えてみましょう。それは法を犯していないとしても、倫理的に許されるものでしょうか。ヨーロッパの規制の声もそうした思いから高まったのだと思います。しかし、私たちはそれでも問題ないというならば、日本社会の求める倫理観はそのレベルということで、実効力のある法規制が進まないのも当然ということになります。