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2026.03.05

ホームグロウン・ローンオフェンダー時代のテロとどう向き合うか

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台頭する「ホームグロウン」と「ローンオフェンダー」

 では、現在のテロリズムの状況はどうなっているのでしょうか。実は、近年の欧米先進国におけるテロの発生件数や被害は、全体として減少傾向にあります。

 オーストラリアのシンクタンク「経済平和研究所(Institute for Economics & Peace)」が公表する「世界テロリズム指標(Global Terrorism Index)」2025年版によれば、西側先進諸国でのテロ事件は2017年のピーク時と比べ、2024年には約30%減少しました。世界全体で見ても、テロによる死者の大半はパキスタン、イラク、アフガニスタン、そしてアフリカ・サヘル地域などに集中しており、欧米先進諸国の割合はわずか1%未満にとどまっています。

 一方で、欧米先進諸国におけるテロの「かたち」そのものは変化しています。かつては、アルカイダによる米国同時多発テロ(2001年)や、イスラム国(ISIS)によるパリ同時多発テロ(2015年)のように、欧米先進諸国における主要なテロには、国外から送り込まれた練度の高いテログループによる攻撃が多くみられました。しかし近年は、「ホームグロウン」のテロリストや、「ローンオフェンダー」による事件が目立つようになっています。

 ホームグロウンとは、簡単に言うと、自国出身者が自国内において実施するテロを指します。また、ローンオフェンダーとは、特定の組織に属さない個人が単独でテロを起こす類型を指します。欧米先進諸国において発生している近年の事件の多くは、こうしたホームグロウンによるローンオフェンダー型のテロが占めるようになってきています。

 こうした状況の背景には、大きく二つの要因があると考えられています。第一の要因は、9.11以降、国際社会全体で大規模テロの防止に向けた取り組みが進んだことです。各国が空港や国境での入国審査を厳格化し、テロ組織の資金供与ルートを監視する体制を整えた結果、欧米先進諸国においては、国外からテロリストのグループが侵入して大規模な攻撃を仕掛けることは格段に難しくなったと考えられます。

 第二の要因は、インターネット、特にSNSの発達です。かつてはテロを実行しようとする者は武器の扱いや爆発物の製造方法、さらには過激思想の体系などを学ぶため、シリアやアフガニスタンなどにあるテロ組織の訓練キャンプなどに赴く場合が少なくありませんでした。しかし現在では、テログループはSNSや動画サイトを通じて思想的プロパガンダを広め、爆弾の製造方法などの情報も容易に入手できるようになっています。結果として、欧米先進国内に居住している個人が、海外のテロ組織等に直接接触することなく、独自に感化され、犯行に及ぶケースが増えていると考えられます。

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※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

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