
日本ではあまり注目されることがなかったフィンランドが、最近、注目されるようになっています。その背景には、ロシアによるウクライナ侵攻がありますが、それだけではないようです。世界一幸福と言われる国がどんな政策を行っているのか。日本も参考にすべきことがあるかもしれません。
中立政策を捨てたフィンランド
フィンランドといえば、国連の関係組織が発表する世界幸福度ランキングで6年連続トップであることが知られているのではないかと思います。ちなみに、2023年の日本は47位だそうです。もちろん、幸福度の測り方、感じ方は様々で一概には言えないと思いますが、フィンランドが暮らしやすい国であることは事実でしょう。
そのフィンランドが、2022年2月に始まったロシアによるウクライナ侵攻を受けて、5月に同じ北欧のスウェーデンとともにNATOに加盟申請し、フィンランドは2023年4月にNATOに加盟しました。日本では、ロシアと長い国境線で接するフィンランドが、NATO加盟を目指すのも当然だろうとの見方もありましたが、私にとっては非常に驚きのニュースでした。というのも加盟申請への意思決定が余りにも速く感じたからです。
ご存知の通り、フィンランドはフィンランド大公国として一定の自治は認められてはいたものの、ロシア帝国に支配されていた歴史があり、1917年に独立を果たしました。その後、第二次世界大戦中の1939年には当時のソ連から軍事侵攻され、国土の一部割譲を余儀なくされます。そして、大戦後、フィンランドは西側諸国との繋がりを徐々に強くしていきながらも、常に、隣国のソ連、そしてロシア連邦を刺激しないようにしてきました。
1995年にEUに加盟した後も、軍事的には中立政策をとり、NATOには加わっていませんでしたが、これは、フィンランドの政治家、官僚の外交感覚だけでなく、国民全般の意向でもあったと思います。
フィンランドの国土は日本とほぼ同じくらいですが、人口はわずか約550万人程度です。ちなみに、日本の人口は約1億2千万人、ロシアは約1億4千万人です。人口約4千万人というフィンランドから見れば大国のウクライナが軍事侵攻されたわけですから、フィンランドの恐怖心は当然かもしれません。とはいえ、長年続けてきた軍事中立の歴史を捨て去り、ロシアのウクライナへの軍事侵攻後、わずか3ヶ月程度で加盟申請の意思決定が行われたのです。
おそらくこの選択に不安を持った国民も少なからずいたはずですが、特に混乱もなく加盟申請へと進んだことは驚きでした。このようにフィンランドをはじめ北欧の国は、一見大胆とも思える政策決定を迅速に行うという側面があります。90年代初頭にフィンランドでバブルが崩壊した際に、ICT産業への転換政策をいち早くとったのもその一例だと思います。
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