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2022.06.15

日本型イノベーションは日本的両利きリーダーから生まれる

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求められる「両利きのリーダーシップ」

 では、「両利きの経営」を実践する上で重要なものはなにか。ひとつには、「探索」によって得た技術や知識をベースにしたプロジェクトチームが、上手く活動できる環境を組織的に整えることが必要です。

 例えば、ファイザーによるコロナ・ワクチンの開発では、そのプロジェクトチームはファイザーのCEO(最高経営責任者)の直下に置かれていたようです。つまり、社内の他部門からの横槍が入らないような環境がつくられていたのです。

 このような、CEOによる判断やトップマネジメントが重要になってくるケースは多いと思います。

 一方で、現場レベルでは、このプロジェクトチームを動かすリーダーに、両利きのリーダーシップともいえるスキルがあることがポイントになります。

 実際、ファイザーの例でも、プロジェクトチームのリーダーであるフィリップ・ドリミッツァーは、かっては自身でmRNA技術の研究を行った経験があり、その可能性を熟知していたようです。

 そのため、その研究のトップをいくビオンテックを探索することができたのです。そして、ビオンテックとパートナーシップを組み、そのリソースと、自分たちのリソースを融合させることに邁進したのです。

 つまり、他社のリソースの価値や重要性を探索することができ、そことパートナーシップを組む行動力と、自社の深化させてきたリソースを融合させて、新しいイノベーションを生む方向にチームを導く両利きのリーダーシップ力をもったリーダーが、「両利きの経営」を推進するためには必要だと言えます。

 こうしたリーダーは、起業家精神が旺盛な欧米の社会では生まれやすいのは想像できますが、日本の社会では果たして同じような展開になっていくでしょうか。

英語版はこちら

※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

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