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西欧でも関心が高まる、私たちが知らなかったイスラム教の魅力

井上 貴恵 井上 貴恵 明治大学 文学部 専任講師

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イスラム教というと、戒律を厳しく守るムスリム(イスラム教徒)のことがよく報道されるため、私たちとは異なる考え方をもった人たち、というイメージをもちがちです。でも、実は、それはイスラム教のひとつの側面に過ぎないといいます。

預言者ムハンマドから始まったイスラム教

井上 貴恵 イスラム教というと、礼拝や断食、また、豚やアルコールなどに代表される食物規定、女性のヴェールなどをイメージする人が多いと思います。また過激思想やテロというイメージをもっている人も多いかもしれません。

 現在、イスラム教徒は世界で約16~17億人いると言われ、近い将来世界で最も多くの信者をもつ宗教になると言われています。

 それだけの数の信者すべてが、豚肉やアルコールを一切口にしなかったり、テロに走る過激派などということは、実際あり得ないことです。要は、私たちが思っているイスラム教は、イスラム教の一面でしかないのです。

 そもそもイスラム教は、7世紀の初めにアラビア半島で生まれたムハンマドが神の啓示を授かる預言者となり、神の教えを広めたことで始まります。

 当時のアラビア半島には、ユダヤ教徒やキリスト教徒、ゾロアスター教徒、土着の多神教徒などが混在していました。ムハンマドに啓示を授けた神は唯一神ですので、「唯一神信仰」という点では、先行するユダヤ教、キリスト教と同様です。

 唯一神信仰を柱とするこれらの宗教はセム的一神教と呼ばれ、基本的な宗教的世界観を共有している部分が多く見受けられます。

 イスラム教の教えはムハンマドが神から授かったもので、これを守ることが、神の意に沿った善い生き方につながり、善き来世(天国)へつながるとされています。イスラム教の教えの柱は、6つの信じることと、5つの行うべきことという形で六信五行としてまとめられています。例えば、五行の中には礼拝や巡礼など、我々がイスラム教と聞いてイメージする実践が含まれています。

 六信五行の遵守はもちろんですが、イスラム教徒は自分の日常行為のすべてが神からみて好ましいか好ましくないか、という視点を大切にします。例えば、日本ではハラールという言葉は「食べて良いもの」という意味だと理解されがちですが、食べ物に限らず、人間の様々な行為が神から見てハラール(許されている)か、そうではないのかが問われます。

 日本でも現世で徳を積むという積善の思想が存在しますし、今でも「一日一善」の精神を大切しているという方も少なくないと思います。許されないことは避け、善く生きたいという思いは日本人もムスリムも共通なのではないでしょうか。

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