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2019.03.06

東京2020ボランティアに秘められたメッセージ

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開催都市の東京都民に深く関わってもらいたい

後藤 光将  東京2020では、大会ボランティア、都市ボランティアあわせて11万人の募集を行いました。それに対して、必要な人員を無償の労働者で充て、お金を儲けようとしている、という批判があります。

 様々な観点があると思いますが、私は、組織委員会が儲けようとか、楽をするためにボランティアを募集したとは見ていません。

 まず、大会ボランティアの募集は8万人ですが、これに約20万人の応募がありました。この20万人の人たち一人ひとりと面接して選抜し、適材適所に振り分ける作業だけでも4~6ヵ月かかり、その後、各種の研修を行うのです。その手間とコストは膨大です。

 例えばこれらの人員を無償ではなく、1日1万円の日当を払う仕事の募集としたら、間違いなく応募が殺到します。その対応の手間もコストもさらに膨らみます。それを避けたいということが、まずあると思います。

 また、交通費は1日1,000円、宿泊費は払われず、宿泊先の手配もしてくれないという条件が厳しすぎると指摘されます。これは、開催都市の東京都民に深く関わってもらいたいという意図があるのではと思います。都内に自宅があれば宿泊先の手配はいらず、1,000円あれば都内のどこの会場にも往復できるでしょう。

 つまり、東京2020に関わりたいという思いがあれば、ボランティアとして最も参加しやすいのは東京都民なのです。参加した立場で東京2020を語り継ぐということも、後世へのひとつの大きなレガシィです。都民には、その主体を担って欲しいとの願いが込められています。

 さらに、新国立競技場をはじめ、様々な競技施設を今後、どのように活用していくのか、その主体となるのも東京都民です。もう、こうした施設の活用を行政任せにする時代ではありません。住民側から主体的に提案していくことが、重要になっていくと思います。

 もうひとつ、重要なレガシィとなるものに、スポーツ博物館があります。旧国立競技場には秩父宮スポーツ博物館がありましたが、いま建設中の新国立競技場に造られるのは、展示スペースのみの予定です。

 しかし、博物館とは研究や教育の拠点となるところであり、展示スペースとともに、貴重な収集物の収蔵庫や研究作業のためのスペースも必要です。現在は倉庫に保管されている秩父宮スポーツ博物館の収蔵物を散逸させるようなことがあっては、日本のスポーツの歴史を後世に伝え、遺していくという意味で、汚点となるでしょう。

 こうしたことが起きないように活動するのは、スポーツ関連や学術関連の団体にたずさわる私たちの重要な役目だと考えています。

>>英語版はこちら(English)

※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

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