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地方公務員の働き方改革は社会改革につながる

出雲 明子 出雲 明子 明治大学 専門職大学院 ガバナンス研究科 教授

地方公務員の働き方改革を進めるために

 しかし、地方公務員も働き方改革を行っていかなければなりません。ひとつには、過重な勤務によって、メンタルヘルスの問題が起きているからです。

 総務省の「地方公務員のメンタルヘルス不調による休務者及び対策の状況」によると、メンタルヘルスの不調により、職員10万人あたり2250人の休務者が出ています。

 もちろん、だからといって、地方自治体が、いわゆるブラック職場というわけではありません。ほとんどの地方公務員は、住民サービスという仕事に誇りや、やり甲斐をもっています。さらに、組織として、メンタルヘルス対策や休務者の支援もどんどん手厚くなっています。

 例えば、案件を個人で抱えるのではなく、複数人で担当する仕組み。また、日常的に産業医が職員のサポートにあたったり、休務者の復職の判断も行っています。復職後の業務量についても、現場の課長や係長が産業医と連絡を取り合いながら決める体制になっています。

 また、地方自治体も、職員の人事評価制度の導入を進めています。それは、能力評価と業績評価の二本立てで、能力評価の方は、コミュニケーション力や調整力、スキルレベルといった内容で、おそらく、民間企業のそれとほとんど変わらないと思います。

 一方、達成度を測る業績評価は、民間企業の営業成績などのように、数字で明確に表すことが難しい内容です。

 しかし、自らの業務改善や業務の効率化といった項目が含まれていることもあります。そうした目標が重要視されていけば、より効果的な地方公務員の働き方改革についての議論が盛んになり、より良い仕組みや取り組みが生まれていくと思います。

 しかし、いまのところ、先にも述べたように、ひとつの案件を複数人で担当する、いわゆる大部屋主義の働き方が、結果として、ひとりひとりの案件数を増やすことに繋がったり、デジタル化が、逆に、業務を増やしたりしています。

 それは、働き方改革の移行期でもあるからだと思います。評価制度も、今後は、より労働生産性を高める方向にシフトしていくはずだと思っています。

 私たち市民は、地元の市役所に、きめ細かい住民サービスを期待します。地方公務員も、その期待に応えたくて頑張っています。

 一方で、頑張り過ぎてメンタルヘルスに不調をきたして休務しては逆効果ですし、そもそも、やり甲斐のある仕事に就いていながら、その実現ができないことになってしまいます。

 民間企業が推し進めるようにデジタル化やオンライン化は、働き方改革にとって非常に有効ですが、地方自治体にとっては、デジタル化を導入することと、よりきめ細かいサービスを実現していくことに矛盾を抱えている状況です。

 「ひとりも取り残さないデジタル化」は、デジタル庁の目標ですが、高齢者や社会的弱者の支援を目指す地方自治体が、それをどう実現していくのかは、やはり、大きな課題になると思います。それは、社会全体の課題であるとも言えると思います。

 私たち市民も共助などの取り組みを進めていくことが、こうした課題を解決していくことに繋がっていくと思います。

 地方公務員の働き方改革が進行することは、実は、社会全体がより良い方向に向かっていくことなのだと思っています。

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※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

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