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デジタル化が進まない地方自治体の業務

 総務省の「地方公務員の時間外勤務に関する実態調査結果」によると、2014~2015年度の地方公務員の時間外勤務の時間数は、年158.4時間でした。一方、民間企業は年154時間なので、それを上回っていたのです。

 民間企業の場合、以前からテレワークやオンラインによる業務が徐々に進んでいましたが、このコロナ禍で一気に普及しました。それにともなって、紙からデジタルへの移行も大きく進みました。

 また、フレックスタイム制の導入や、残業の許可制も一般的になってきています。そのため、従業員の働く時間の管理は上司の責任、つまり、管理職の管理能力とみなす意識も浸透してきていると思います。

 つまり、従業員の労働生産性を高めることを大きな目標として、そこから、業務の仕組みや働く意識を改革していくことができたのだと思います。

 一方、地方自治体にとってニーズが増大する福祉分野は、相手の事情を詳細に把握したり、場合によっては相手のお宅に伺うなど、対面サービスとなることが多く、相手の都合に合わせた勤務時間になりやすいのが実情です。

 とはいえ、ひとりひとりが抱えている案件数も多いので、フレックスタイム制の導入も簡単ではありません。また、残業の許可制も導入されていますが、予算の制約や、それが住民サービスの低下に繋がってはならないという意識もあります。

 また、オンラインの導入も民間企業ほどには進んでいません。

 例えば、組織内の会議などではオンライン化が徐々に進んでいます。また、都市計画や入札のような業務は相手が企業となる場合が多いので、そこではオンラインによる業務推進も行いやすくなります。

 しかし、一般住民に対するサービスのオンライン化はなかなか進みません。

 例えば、民間企業であれば、従業員のオンライン業務の環境を整えたり、従業員側も自らネット環境などを整える努力をすると思います。

 しかし、市役所が、ネット環境がまちまちの住民に対して、すべてのサービスをオンラインサービス化することはできません。すなわち、オンライン対応と対面対応を同時に併用することになるわけです。

 すると、紙のデジタル化なども一気に進めることはできず、むしろ、作業の二重化が起こり、業務が増えることにもなってしまいます。

 さらに、情報セキュリティの問題もあります。住民情報の保護は絶対に行われなければならないのです。

 こうした点を見ると、本来、働き方改革の取り組みの中心となるはずのデジタル化やオンライン化が、地方自治体にとっては簡単ではないことがわかります。

英語版はこちら

※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

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