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2025.02.13

人口減少下で生き残る中小企業・小規模事業者とは?

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後継者問題は人口減少や過疎化だけが原因ではない

 中小企業の後継者問題は、経営者の年齢層ごとに状況が大きく異なります。たとえば、30代や40代の経営者、つまり2代目や3代目で事業承継を終えたばかりの方々は、アンケート調査で「後継者がいない」と回答するのが一般的です。これは事業を引き継いだばかりで、まだ次の後継者を考える段階ではありません。

 一方で、とくに深刻なのは50代後半から60代の経営者層です。この世代には、後継者探しを始めても意欲を失い放置しているケースが多く見られます。事業を誰に引き継ぐのかが曖昧なまま時間が過ぎることで、会社の存続が危ぶまれる状況です。

 また、後継者問題の深刻さは、企業の創業年数によっても異なります。創業20年未満の新興企業では、創業経営者が事業承継の経験を持たないことが多く、後継者育成に手が回らない傾向があります。創業者が事業の成長や経営の維持を優先するあまり、自分の後継者を探し育てる時間が十分に確保できないのです。

 他方、100年以上続く老舗企業では、後継者問題は比較的少ないです。老舗企業では、経営ノウハウや家族経営の伝統がしっかりと受け継がれており、親族内で後継者を育てる意識が高いのが特徴です。家族内で経営者の姿を見て育ったことで、「自分も経営者になりたい」と考える後継者が現れる傾向が強いことも指摘できます。

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 私の研究では、親族や社員への事業承継が中小企業で最も一般的な手法であることが明らかになっています。M&Aを利用した事業承継は少ない状況です。その背景には、買い手のニーズと売り手の事情が一致しないという現実があります。

 たとえば、後継者がいないうえに3期連続赤字の企業は、M&A市場では歓迎されません。会社が保有してきた機械設備や特許といった資産が買収対象となることはあっても、従業員を含めた事業全体を引き継ぐケースは少ないでしょう。

 また、親族や社員への事業承継が好まれる理由は、会社の資産管理、従業員のマネジメント、そして顧客からの信用が大きく影響します。中小企業の経営者は、これらの要素を守るために、自社内から後継者を育成する必要性を強く感じていると考えられます。

 後継者問題は地方の人口減少や過疎化とも深く関わっていますが、決してそれだけが原因ではないのです。事業が安定して回っているか、従業員や顧客との関係を大切にしているかなど、経営者自身の姿勢が問題解決を左右します。後継者を育成しやすい環境を整え、地域や従業員と協力しながら事業を維持することが、中小企業の未来にとって重要だと思います。

英語版はこちら

※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

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