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企業の非財務情報に注目すると社会が変わる!?

弥永 真生 弥永 真生 明治大学 専門職大学院 会計専門職研究科 教授

ESGに関わる非財務情報開示の意味

 非財務情報として、ESGに関わる情報開示を重視する理由は大きく3つありますが、そのひとつ目は、投資家と経営者の間の対話を促進するという発想です。

 たとえば、先に述べたように、非財務情報とは企業の将来ビジョンを表すものです。それを基に、投資家は投資の判断をしたり、経営戦略について経営者と意見交換をすることができるわけです。

 つまり、投資家は財務情報のような数値だけで企業を判断するのではない、という状況があるということです。

 ふたつ目は、一定の企業は社会に対して責任を負っているという発想です。だからこそ、企業がやるべきことをきちんとやっているのか、それを確認するために報告させるということです。

 日本では、accountabilityは「説明責任」と訳され、それは、なにか問題を引き起こしたときの申し開きのように捉えられています。

 しかし、ヨーロッパでは、企業は責任を負っている主体(responsibility)であり、だからこそ、果たすべき役割を果たしているのかを明らかにする、説明することが、そもそも求められるのです。

 つまり、そこには、利益を上げることだけが企業の存在意義(raison d’être)ではないという思想があるのです。

 三つ目は、情報を開示しなければならないときには、企業は、その開示内容を前提として自らの行動を決めるのがふつうだ、という発想です。

 たとえば、CO2排出をこれだけ削減する、という情報を開示するためには、そのための取り組みを企業は自ら実施していくだろう、ということです。

 EUは、こうした発想の下に、非財務情報の開示をますます求める方向に進んでいます。それによって、企業のサスティナブルな成長が可能となり、ひいては社会の持続可能性にも繋がっていくからです。

 こうしたEUの認識に比べると、日本の認識は、残念ながら、まだ低いと言わざるを得ません。それは、日本国内の習慣や価値観を背景として、企業、そして、経済団体が、自主的に自らを律してきたからかもしれません。

 しかし、サプライチェーンやバリューチェーンがグローバル化している現代では、国内の、いわば阿吽の呼吸のみでは、海外における人権侵害を抑止できませんし、気候変動問題などは一国の問題だけではないのです。

 もちろん、日本でも、非財務情報の開示を重視する方向に動いています。しかし、見かけ上、EUなどと同じ開示を要求することではなく、重要なのは、そのような開示がなんのために必要なのか、それをみんなが認識し、共有することなのです。

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