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2020.10.14

既存設備の上手なシェアリングから新たなシステムが生まれる

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貨物と乗客でシェアリング

 過疎地の交通システムも変化が求められています。

 日本の総人口は減少し続けており、さらに、その人口の半分超が三大都市圏に集中しています。つまり、地方の過疎化は深刻な状況であり、その影響は公共交通にも及んでいるのです。すなわち、利用者が少ないため採算が取れないのです。

 一方で、特に高齢者にとっては、バスなどの公共交通は貴重な足です。そこで、自治体などが交通機関の赤字を補填するなどの体制をとっていますが、その負担に耐えられなくなると、廃線にせざるをえなくなります。しかし、それは、住民の生活環境の悪化に繋がります。

 つまり、ここでも、利用者が多かった時代に構築された交通システムが機能しなくなり、変化が迫られているのです。

 変化のためのヒントは海外にあります。例えば、南米ボリビアの田舎の町に行くと、トラックが走っていないことに気がつきます。

 なぜかと言うと、首都のラパスから田舎へ運ぶ物資はありますが、田舎から首都に運ぶものはほとんどありません。そのため、トラックで首都から田舎に荷物を運ぶと、帰りは空の状態で走ることになり、非常に効率が悪いのです。

 そこで、ボリビアでは、長距離バスが乗客とともに荷物も運びます。バスなら、田舎から首都に向かうときも、荷物はなくても乗客がいます。つまり、貨客混載にして採算を取っているのです。

 実は、貨客混載方式は途上国などでは普通に行われている方式ですし、ヨーロッパのスイスでも、貨客混載のポストバスを導入しています。それが、その地域において合理的であるからです。

 日本では貨客混載は法律で規制されてきました。しかし、近年は過疎地に試行が行われるなど、規制緩和に向けた検討がなされています。

 要は、現代のニーズに適応した交通システムを、また一からつくるのではなく、既存の設備やシステムを新たなニーズに合わせて上手く活用することで、より迅速な対応に繋げていくこともできるのではないか、ということです。

※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

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