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中小企業の成長発展のために ―中小企業の成長なくして一国の成長はない―

岡田 浩一 岡田 浩一 明治大学 経営学部 教授

成長戦略と小規模企業基本法

岡田浩一教授 アベノミクスで注目しているのが、三本の矢の一つである「成長戦略」である。昨年6月に閣議決定された「日本再興戦略―Japan is Back―」の中に盛り込まれた「民間企業活力の復活」では、黒字の中小・小規模企業数を2020年までに現在の70万社から140万社へ倍増する目標が掲げられている。その実現のために、起業の促進、中小企業向けの融資拡大、技術革新や新商品開発をサポートする国の補助金制度の整備、経営支援のための専門家派遣などが検討されており、今夏までに具体策がまとめられる計画だ。
 また、今秋立法化される予定の「小規模企業振興基本法」も注視している。先に日本の企業の99.7%は中小企業であることをのべたが、その中小企業の内の、実に87%が小規模企業である。小規模企業とは製造業・その他の業種では従業員が20人以下、商業・サービス業では同5名以下の企業を指す。日本は“小規模企業大国”なのだ。1963年に制定された中小企業基本法は、中小企業を経済的弱者と位置づけ、救済する精神に基づいた法律だったが、1999年に大改正が行われた。中小企業は弱者ではなく、経済のダイナミズムを生む源泉ととらえ、活力ある中小企業を支援する内容に改正されたのである。今回の小規模企業振興基本法は、小規模企業にフォーカスして支援するための法整備であり、経営支援や販路開拓、事業承継等において求められる人材や資金等の経営資源の供出をはじめ、小規模企業振興に向けて具体的な検討が進められている。こうした政策が、個々の企業の業績向上を実現し、とりわけ存在比率の高い小規模企業の振興につながることに期待したい。

おもてなしの精神が生むイノベーション

 今、大企業といわれる企業も元々は中小企業だった。企業の成長発展を導いた経営者の多くは、Inventor(投資家)でありInnovator(革新者)でありImitator(模倣からヒントを得る人)であったと思われる。そしてこの3つの“I”に加えて必要な要素が、Information(情報)、Idea(アイデア)、Intelligence(知性)の3つの“I”であり、これらを活用してビジネスチャンスをキャッチし拡大していくことが、企業経営に求められる。さらに私は、日本の中小企業経営には“愛”があると考えている。ここでいう愛とは、流行語にもなった“おもてなし”の精神にも通じる。日本はおもてなしの精神が創意工夫の根本にあり、それがイノベーションを生んできた。より便利につかってもらいたい、より喜んでもらいたい、より楽しんでもらいたい等々、モノ作りにおいてもサービスにおいても、作り手の気持ちが日本的なイノベーションの源にある。既存の基盤に立脚し技術やサービスの進化を成し遂げていく「漸進的イノベーション」を、日本の中小企業はおもてなしの精神で営々と積み上げてきたのだ。その過程で培われてきたのは、コスト競争の土俵に上がるのではなく、新たな価値を創り出し、その価値でビジネスを展開する力である。では、その力がなぜ十全に発揮されないのか。

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