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働く高齢者の満足度を上げるための秘策あり

永野 仁 永野 仁 明治大学 名誉教授(元政治経済学部教授)

高齢者が働く理由は収入だけではない

永野 仁 このように、一口で働く高齢者といっても、何が満足度を高めるのか、そのためには何が必要なのかも、人それぞれで違うことがわかります。重要なのは、働く高齢者をワンパターンで捉えないことです。最初に、働く高齢者の満足度が低い理由は収入が少ないことと述べましたが、もちろんそれは大きな要因ですが、収入のために働いている高齢者ばかりではありません。長年培った自分の経験や能力を発揮すること、社会とのつながりや役立っていることを実感することも、働くモチベーションになっているのです。雇用する側にとって必要なのは、まず、一人ひとりに、どんな仕事をしたいのか、じっくり聞くことです。もちろん、いつもその希望に添えるとは限らないでしょう。そのようなときでも、会社は何を求めているのか、何をやって欲しいのか、その役割をはっきりと示すことが大切です。そして、職場の人たちにも、彼にはこういうことを期待してきてもらっていると、しっかり伝え、そのことを互いに共有することです。そんなことは当たり前のことと思われるかもしれませんが、調査をすると、多くの企業で、この基本的なことができていないのがわかります。

 ある研究者は、継続雇用制度により、定年前と後で待遇がガラッと変る現状を、一国二制度と巧みに指摘しています。この言葉は、もともとは中国の香港政策を指しての言葉ですが、その中国と香港の関係がだんだん行き詰まってきているように、定年後の雇用を会社の都合だけで取り決めていると、継続雇用制度も行き詰まってしまうかもしれません。

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