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2026.08.06

なぜ「正しい選択」は広がらないのか? 消費者・農家・企業の行動から考える持続可能な食料システム

なぜ「正しい選択」は広がらないのか? 消費者・農家・企業の行動から考える持続可能な食料システム
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近年、気候変動を初めとする環境問題への対策と、食料の安定供給との両立が世界共通の課題となっています。たとえば農業分野では、水田から発生するメタンや、化学肥料由来の窒素の排出が問題視されています。また、消費者の側では、「健康に良い」「環境にやさしい」とうたわれる植物性食品(プラントベース食品)や環境配慮型農産物が店頭に並び、その関心は確実に高まっています。 しかし、こうした情報の普及が、必ずしも現実の行動変化につながっていないのも事実です。人々の行動を変えるには、どのような情報伝達のあり方が必要なのでしょうか。

正しい知識が合理的な行動につながらない、「意識と行動のギャップ」という問題

佐々木 宏樹 従来の制度・政策は、「正しい情報を与えれば、人間は合理的に行動を変える」ことを前提に作られていきました。しかし近年、この前提は必ずしも正しくないという認識が世界で共有されつつあります。環境に配慮した農業技術はなかなか普及せず、健康や環境に良い食品も、従来の食品と比べると後回しにされる。こうしたギャップは、日本だけでなく、欧米諸国でも繰り返し報告されています。

 行政やメディアなどを通して触れる情報によって、多くの人が「環境に配慮した行動が大切だ」と理解しているにもかかわらず、その意識が実際の農業や購買行動にまで反映されていません。こうした「意識と行動のギャップ」は、持続可能な食料システムの実現を阻む大きな壁となっています。

 知識や意識の向上だけで変わるほど、人間の行動は単純ではありません。政策を通じて持続可能な食料システムを実現するには、その理念を掲げることや制度を整えることだけでなく、「いかに実際に人を動かすことができるか」という視点がこれまで以上に求められるのです。

 そこで有用となるのが、行動経済学の知見です。行動経済学では、「人間は常に合理的に判断する」という経済学のこれまでの前提を見直し、心理学の知見を取り入れて人間の行動を分析します。これまでの研究によって、私たちの行動は知識や経済条件だけでなく、周囲の人がどうしているか、変化に伴う面倒さや不安、長年の習慣など、さまざまな要因に左右されることがわかっています。

 私はこうした人間の「癖」を踏まえて、持続可能な食料システムを実現するための制度設計に貢献することをめざして研究に取り組んでいます。研究手法は、農業生産の現場や消費者による購買の現場に介入するフィールド実験を行い、どのように情報を届ければ行動変化を促すことができるのかを分析するというものです。

英語版はこちら

※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

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